遠山清彦です。日本では知らない人が多いのですが、6月20日は、「世界難民の日」です。私はこの日、東京大学駒場キャンパスのある建物で開催された「難民トークショー」にメインゲストとして招かれ、約2時間、日本における難民認定制度の課題などについて意見を述べさせていただきました。

当日の模様は、インターネットでのライブ中継でUstream配信されましたが、アーカイブでも見ることができます。http://www.ustream.tv/channel/nanmin-now

このトーク、少々長いですが、これまでの私の難民問題への取り組みと考え方がわかりやすく集約されています。また、司会をしてくれたヘインさんは、ミャンマー難民であり、日本に来て最初の4年間は難民認定を受けられずに大変苦労した方です。その笑顔と語りには、深い魅力があります。

実は、これもあまり日本で知られてないのですが、昨年は、『難民の地位に関する条約』が採択されてから60周年、日本がこの条約に加入してから30周年という佳節にあたっていました。「せっかくの記念の年に、国会で何かできないか。」私が所属する超党派のUNHCR議連で話題になり、民主、自民、公明の3党の所属議員が努力して、記念の本会議決議の可決を実現しました。昨年11月17日のことでした。

その決議文の最終段落だけ引用します。
「このような過去の実績と難民保護の国際法及び国際的基本理念を尊重し、日本は国際的組織や難民を支援する市民団体との連携を強化しつつ、国内における包括的な庇護制度の確立、第3国定住プログラムの更なる充実に向けて邁進する。同時に、対外的にも従来通り我が国の外交政策方針にのっとった難民・避難民への支援を継続して行うことで、世界の難民問題の恒久的な解決と難民の保護の質的向上に向けて、アジアそして世界で主導的な役割を担うべく、右決議する。」

私も関与して作成したのですが、本会議決議ということで、少々堅苦しい表現になっていることは、ご容赦ください。

こうした決議が採択されたこと自体は、画期的なことに違いないのですが、「難民トークショー」の中で私自身が指摘しているように、日本の難民保護政策と体制は、まだまだ国際社会で自慢できるレベルではありません。過去30年間で日本に難民申請した人の数は1万1千人を超えますが、難民として認定された人数はなんと598人にすぎません。この数は、欧米諸国が1年間で受け入れる数をはるかに下回っており、日本は難民保護の分野で「人道先進国」とはみなされていないのが現実なのです。

それでも、私が難民政策に深くかかわってから、この10年間で様々な改善がなされてきました。難民申請者が入国してから60日経つと申請資格を失う「60日ルール」の撤廃。難民申請者の法的地位を「仮滞在」という形で認めたり、難民認定の異議申し立てを法務省外の民間専門家も含めたチームで再審査する「難民審査参与員制度」も導入しました。そして最近では「第3国定住支援」と呼ばれる一定数の難民を毎年受け入れる事業が導入されています。こうした成果のほとんどは、公明党の提案に基づくものでした。

しかし、より細かく見ると、まだまだ日本の難民認定と保護の制度には、問題点が多く、結果として認定難民の数が増えない状況が続いています。もちろん、自ら難民申請した者が自動的に難民であると短絡的な主張をするつもりはありません。しかし、日本で申請した外国人の難民審査が、本当に中立公平に行われているか、専門的知識と経験を持った官僚が審査しているのか、疑念も多く残っています。

「難民」は、自分の母国で政治的・宗教的・人種的・文化的な理由で迫害を受け、逃れてきた人々です。日本にいる難民の方々ともお付き合いがありますが、まさに筆舌に尽くしがたい苦労を経験した人ばかりです。そして、そうした労苦を乗り越えたゆえに、難民の方々には、歴史的に立派な仕事を成し遂げた人が多くいます。昔でいうと、相対性理論で有名なアルバート・アインシュタイン博士、最近では、インテル社のCEOを務めたアンディ・グローブ氏も難民でした。

日本社会では、残念ながら、「難民」というと、「かわいそうな人たち」という連想が強いようです。私は、海外で約20の難民キャンプを回り、また日本に住む多くの難民の方々と接してきましたが、それは間違いです。難民の方々は誇り高く、そして異文化を通して多くのことを私たちに教えてくれます。

日本は、一足飛びに多民族国家にはならないかもしれません。人為的にそうする必要もないと思います。しかし、悲劇的な境遇から逃れてきた方々を温かく受け入れ、活躍の場を与えてあげるくらいの寛容性を身に着けなければ、日本は「真の人道国家」にはなれないと私は思います。

今年の6月20日。ヘインさんの笑顔を見ながら、私のライフワークである難民問題にさらに頑張る決意をしました。