参議院議員・遠山清彦

 政府は今年の通常国会に難民認定法の改正案を出している。この法律が適用されるのは、母国での迫害から逃れ、難民条約締約国・日本に庇護(ひご)を求めてくる人々だ。この人々の立場に立ち、私見を述べたい。
 改正のポイントは二つある。一つは、いわゆる「60日ルール」と呼ばれてきた申請期間を撤廃したことだ。申請期限の超過のみを理由として難民申請者を不認定とすることについては批判があり、一応それに対応した形になっている。
 しかし、改正案を読むと、申請者は(日本上陸後)6カ月以内に申請するかしないかで、滞在中の処遇に大きな差が出るような仕組みになっており、実態上の期限は延長されて残っていると思える。真の難民は、いつどこで申請しようが難民であり、庇護を受ける権利がある。そもそも難民条約は申請期限について一切規定していない。法制度上何らかの期限を設けざるを得ないのかもしれないが、法務省には難民救済が人道的作業であるという原点を忘れず、柔軟かつ公正な運用を望みたい。
 二つ目の改正のポイントは、現行法では「不法滞在」の状態で収容の可能性がある難民申請者に「仮滞在」という法的地位を与え、審査結果が出るまでの間、退去強制手続きを停止することである。国連人種差別撤廃委員会は01年に「すべての難民申請者がとくに十分な生活水準および医療についての権利を有するよう確保すること」を日本政府に勧告しており、その意味でこの改正は基本的に歓迎できる。
 ただし、気になるのは、仮滞在がすべての難民申請者に許可されるとは限らないとされている点である。法務省は「仮滞在を不許可とした者でも、結果が出るまで送還はしない」としているが、仮滞在を許可する条件に、第三国を経由せず直接日本に来たことなどが含まれていることには、疑問が残る。
 制度の乱用防止が重要なことは理解する。だが、難民かどうかの審査もしていない段階で、政府が恣意(しい)的な判断で申請者を差別することが、果たして妥当だろうか。この点については、国会で真剣に議論していかなければならない。
 最後に、今回の改正で欠落している重要な問題を指摘しておきたい。「不服申し立て制度」の見直しだ。
 難民支援関係者の多くは、1次審査も不服申し立て審査も法務省入国管理局が行っている現状に対し、見直しを要求している。認定手続きの公正さを確保するためには、不服申し立て案件の審査は行政から独立した機関が行うべきだというのが、その主な理由である。
 私は昨夏、ニュージーランドを訪れ、そのような不服申し立て案件を審査する「難民の地位控訴局」(RSAA)という第三者機関を現地調査した。この機関は政府の財政支援を受けているが、1次審査を行う政府部局との人事交流は一切なく、難民かどうかの判断も完全に行政から独立して行っていた。そのため内外でニュージーランドの認定制度に対する信頼は極めて高く、結果として乱用も起こりにくくなっているという印象を受けた。
 法務省は法相の私的諮問機関などを軸に、今後もこの点の見直しを検討していくというが、諸外国の例も大いに参考にし、制度の信頼性を高める改善策を提示すべきである。
 脱北者の問題を出すまでもなく、もはや日本は難民問題を傍観することは許されない。政治家も、官僚も、そして国民も、真剣にこの問題に取り組む時代に入っている。

=公明党難民問題対策プロジェクト事務局長
(毎日新聞)