参議院議員(公明党) 遠山清彦

 瀋陽総領事館での亡命者連行事件を受けて、政府は従来の難民・亡命者対応策の見直し作業を開始した。難民認定作業を所管する法務省は、法務大臣の私的懇談会「出入国管理政策懇談会」に「専門部会」を新設し、そこでの検討を軸に作業を本格化する構えのようだ。だが、難民や亡命者といえば、「法務省で」という政府の姿勢に、私は強い不満を感じている。
 確かに「難民認定」という作業に限っていえば、法務省の専管事項である。しかし難民問題というのは、難民をどこでどう受け入れ、どういう基準と方法で認定し、また認定結果を待っている難民申請者をどう待遇するか、そして認定された難民の日本定住をどう支援していくか、というプロセス全体の問題である。
 その意味で、関係省庁は、法務省(難民認定)に加え、外務省(在外公館での対応など)、文部科学省(日本語教育の提供)、厚生労働省(医療、保険、住居、就労支援など)、総務省(地方自治体での外国人登録、そのほかの行政サービス)などに及ぶ。難民問題は省庁横断型の政策課題であり、もし本格的な見直しをするというのであれば、内閣官房主導で総合的にやるのが筋だ。
 ここで想起されるのは、実は日本政府が受け入れている難民には2種類あり、しかもその待遇が異なっていることだ。
 ひとつは、インドシナ難民であり、1979年の閣議決定に基づき特別の定住促進支援を享受している。この支援スキームは、内閣官房に事務局が置かれているインドシナ難民対策連絡調整会議が推進しており、語学教育・社会生活適応指導・就職斡旋など各種の支援事業が、外務省所管のアジア福祉教育財団・難民事業本部によって実施されている。
 もうひとつは、難民条約に基づいて認定された難民(条約難民)であるが、このような総合的支援は行われていない。また、前者は本国から家族を呼び寄せることが容易なのに、後者は事実上ほとんどできない、という指摘もある。
 さらに、条約難民については、日本に上陸してから60日以内に難民認定を申請しなければならない問題や、申請後結果が出るまでの間(通常1?2年)、在留・就労許可が与えられないため法的には不法入国者扱いされ物心両面で苦しんでいる問題などもある。
 このインドシナ難民と条約難民の処遇における格差の問題は、昨年3月国連人種差別撤廃委員会によっても批判され、改善が求められている。政府は、この勧告を受け入れ、早急に必要な施策を取るべきだ。具体的には、現在インドシナ難民とその家族だけが享受できる総合的支援スキームの対象を拡大し、条約難民も各種支援事業を利用できるようにすることや、それが無理なら、新しい支援の枠組みを立ち上げるべきだろう。
 国会審議では、「難民をどれくらい受け入れるべきか」という「量」の話ばかりで、「難民申請者や認定難民をどう処遇するか」という「質」の話が少ない。質の改善なしで量を増やしても、人道的には問題が悪化するだけである。人道大国への道は、まずは難民処遇の質の改善から、と訴えたい。
(朝日新聞)