* 参院議員/遠山清彦
* 「人間の安全保障」具体化へ
* 重要な保健・医療の援助

 私は、3月16日から2日間、千葉県木更津市内で開催された「ヒューマン・セキュリティ アジアの新しい協力関係の政策的枠組み」と題した国際会議(「第4回明日のアジアを創る知的対話」=木更津会議)に参加した。
 この会議の主題は、1つは「『人間の安全保障』の政策形成とその実施のための枠組みをどうするか」、もう1つは「貧困国における保健・医療問題に対して『人間の安全保障』的アプローチの有効性を確認する」ことで、日本、米国、アジア諸国の専門家、政治家、NGO(非政府組織)関係者ら約40名と、活発な議論を交わした。
 「人間の安全保障」は、1994年に発表された国連開発計画(UNDP)の『人間開発報告』に初めて登場した概念で、「人間がその生命と尊厳を危うくする脅威から自由な状態」と定義されている。日本政府は、小渕内閣の時代に「21世紀を『人間中心の世紀』とするために人間の安全保障が重要」と表明し、99年3月には国連に「人間の安全保障基金」を日本の拠出金をもとに設立。公明党もこれらの取り組みを強力に推進し、今日では、「人間の安全保障」は日本外交の最も重要な柱の1つと位置づけられている。
 さて、今回の会議に参加して私が改めて認識させられたことは、保健・医療の問題が「人間の安全保障」に深くかかわっているということである。今日、世界が直面する危機はいろいろあるが、主なものとしては、(1)地域紛争による危機(2)感染症による危機(3)貧困による危機――の3つを挙げることができる。そして、これらの危機はすべて、人間の健康を阻害することにつながる。「人間の安全保障」をその中核的部分から見ていったとき、最も大切なものが生命であり健康であることは言うまでもない。しかし、現実の世界の多くの国では、この人間の中核部分が常に脅威にさらされているのである。
 私も昨年10月と12月にパキスタンを訪問し、現地のアフガン難民キャンプを視察したが、一番心を痛めたのは、劣悪な衛生環境と基礎的医療の欠如だった。人道的な緊急事態では、衣食住の支援が前面に出てしまうのは仕方がないが、中長期的には、やはり保健衛生面での援助も大切だ。これは、精神的健康を維持することへの支援も含まれる。
 世界保健機構(WHO)が昨年発表した資料によると、1年間の世界の死者数は約5570万人だが、その35%にあたる約1940万人の死は防止できたといわれ、この「回避できうる死」(アボイダブル・デス)の中には、基礎的な医療で治療できる伝染病や、自殺などが含まれている。
 これに関連し、会議2日目には、カンボジアやフィリピン、インドネシアなどでの医療活動の実態に即して「人間の安全保障」アプローチの実践的研究が報告され、アジア地域における伝染病対策、基礎的医療の改善の方途が示された。
 会議での議論を通じてはっきりとしてきたことは、「人間の安全保障」はもともと21世紀外交の新理念として登場したが、今やどの国の内政にとっても最重要な理念である、ということだ。これは先進国である日本社会でも、医療制度の問題が常に国民の最大の関心事であることからも明らかである。
 「概念から行動へ」――人間中心の新世紀を実現するキーワードとしての「人間の安全保障」をいよいよ具現化してゆくために、「人間主義の政治」を掲げる公明党が、外交・内政双方でさらに奮闘していかねばならないとの思いを深くした。 
(公明新聞)