事業の流れを透明に

 養子縁組のあっせんをめぐり金銭トラブルなどが相次いでいる問題で、厚生労働省は事業者向けのガイドライン(運用指針)策定に向け検討を始めた。

 養子縁組あっせんとは、生みの親が育てられない子どもを国内外の他の夫婦に紹介し、養子縁組を手助けする民間事業だ。しかし、事業に当たっての基準はなく、すべて民間事業者に任せきりになっているのが現状。業者の中には多額の寄付金を強要しトラブルとなるケースもあるという。運用指針の策定は、あいまいになっている事業者の基準を明確にし、事業の透明化を図るのが狙いだ。

 児童福祉法では営利のあっせんを禁じ、実費のみの徴収を認めている。しかし、厚労省が昨年(2004年)10月に行った調査によれば、届け出ている8事業者のほとんどで実費徴収のほかに寄付金制度を導入していた。寄付金の平均額は一人当たり約66万円、最高額は258万円だった。ただ、形式で実費と寄付金とを分けている場合もあり、実費と営利を目的とした不当な利益について「一律に線を引くのは難しい」(厚労省)という。悪質な業者はこうした点を突いてくる。指針には寄付金の在り方を含め「営利」の明確な定義が必要だ。

 養子あっせんは社会福祉事業として位置づけられているが、問題はこの事業が社会福祉法に基づく届出制で、違反しても罰則がない点にある。これでは無届け業者がはびこる原因となる。2001年度からの3年間に、日本から養子として海外に送られた子どもの数は76件に上った。しかし、米国務省の統計によれば、この3年間に118人の日本人養子が米国に入国していたことが判明している。米国一国の数字だけを見ても、事実上、野放しの状態だ。日本からは毎年欠かさず養子が入ってくるという。厚労省は早急に養子あっせんに関する詳細な実態を把握する必要がある。あっせん事業者についても、許認可制への転換を検討すべきであろう。

 海外への養子あっせんをめぐっては、寄付金の名目で一人550万円、二人で1000万円も要求された、との新聞報道も見受けられる。国際社会では、国際養子縁組については、かねてから児童買春や児童ポルノ、臓器売買の隠れみのに使われている、との指摘がなされてきた。そのため1993年には、国際養子縁組での子どもの権利を保障するための共通ルールを定めたハーグ条約が締結されている。しかし、日本は国連・子どもの権利委員会からも再三、勧告されているにもかかわらず、批准していない。「国内法整備のめどが立っていない」(外務省)というのがその主な理由だ。

海外では厳しい要件

 国際養子縁組について諸外国は年々監視の目を強めており、国内養子縁組よりも厳しい要件を課す防止策をとっている。韓国やフィリピン、インド、ネパールでは自国の子どもを養子縁組で海外に連れ出す際には、特別な許可が必要だ。また、出国後も養子の状況について毎年報告させる国もある。

 日本は先進国の中で、養子として海外に送り出される子どもの数が多いにもかかわらず、子どもの権利を保護する方策は講じられていない。公明党の遠山清彦参院議員は、3月の厚生労働委員会で養子縁組あっせん事業の現状を指摘し政府に早急な対応を迫った。養子あっせんの流れを透明にする政策や法整備を急ぐ必要がある。
(公明新聞:2005年5月11日付)