○遠山清彦君 公明党の遠山清彦でございます。
私は、公明党を代表し、ただいま議題となりましたいわゆる国際刑事裁判所に関するローマ規程及び同裁判所に対する協力等に関する法律案につき質問いたします。
公明党は、国際刑事裁判所、いわゆるICCがオランダのハーグに設置された二〇〇二年七月の直前に党内に日本の早期加盟を推進する小委員会を設け、また、その後、マニフェストの中にもそのことを明記して精力的に活動してまいりました。
私自身、本院議員として行った初めての国会質問は、二〇〇一年十月十九日のテロ特措法等に関する代表質問でございました。その中で、当時発生した米国同時多発テロに象徴されるようなテロリズムの再発防止を目的とする国際司法機能強化の一環として、政府に対しICCの早期設置への努力を強く求めました。それから六年経過した本年、日本の加盟がようやく実現する運びとなったことは誠に感無量であります。
ICCは、戦争犯罪並びに重大な人道上の罪に関し、それを犯した個人を裁く常設の国際裁判所であり、国際法上いわゆる不処罰の文化をなくしていくための画期的な第一歩ととらえられております。人類の歴史の中では、集団殺害や集団レイプ、民族浄化等、おぞましい犯罪が繰り返されてきましたが、国家やそれに準ずる組織の名の下に行われた場合、しばしばそれらの犯罪行為の個人責任は不問に付され、処罰を免れてまいりました。ICCの登場はこの不処罰の文化と人類が決別することを宣言したものであり、これから加盟する日本は、戦後一貫して平和主義を貫いてきた国として、この歴史的に極めて重要な作業の中で積極的な役割を果たすべきであるということをまず強調するものであります。
このことを念頭に、四点、外務大臣にお尋ね申し上げます。
日本のICCへの加盟が遅れたことに関し、ICCに対し消極的な態度を取ってきた米国政府への政治的配慮があったとの指摘が野党の一部などでありますが、これは根拠がないと考えます。なぜなら、日本は以前から一貫して国際刑事裁判の実施について積極的であり、例えば旧ユーゴ国際刑事裁判所、ICTY、ルワンダ国際刑事裁判所、ICTR及びカンボジアにおけるクメール・ルージュ裁判に対し、財政負担も含め、人的貢献も含め、強力に支援してきた実績があるからであります。他方、米国政府が自国兵士のICCによる訴追を懸念し、それを回避するための二国間協定を締結してきたことは事実であります。今後、米国が同様の協定締結を日本に求めてきた場合の対応について、外務大臣の見解を求めます。
次に、日本は加盟後、ICCへの最大資金拠出国となります。ローマ規程の再検討会議や判事の一部改選が予定されている二〇〇九年をにらみ、最大拠出国にふさわしい人的貢献の強化を図るとともに、財政規律の確保等を含むICCのガバナンス強化についても日本はリーダーシップを取るべきと考えます。先ほど言及した旧ユーゴ、ルワンダに関するアドホックな刑事裁判所の分担金も、毎年、現在では合わせて六十億円を超えており、常設のICCの運営の効率化については、その財政負担についての国民の理解を得るためにも、政府に最大限の努力を求めたいと思いますが、外務大臣の御所見を求めます。
また、二〇〇九年の再検討会議の議題としては、先送りされております侵略の罪の定義や核兵器を含む大量破壊兵器の扱い、テロリズムや麻薬犯罪とICC管轄権の問題が予定されていると認識しております。これらは国連での議論でもなかなか合意が得られない難問であると承知しておりますけれども、国際社会における法の支配の強化、ICCの紛争予防及び犯罪抑止力を高めるためにも避けて通れないテーマだと考えます。特に、アジア地域においては、国境を越えたテロ組織の活動が現存し、その資金源として麻薬犯罪の存在も指摘されているところであります。また、核兵器の問題につきましては、正に北朝鮮の核保有という眼前の課題を日本は突き付けられております。日本として積極的な議論のリードを図っていただきたいと考えますが、政府の方針を伺います。
最後に、武器貿易条約の件について伺います。
毎年世界で約五十万人もの犠牲者を出している武器は、小銃などの小型武器であり、一部専門家の間では、これこそ、小型武器こそ事実上の大量破壊兵器だとの声もございます。不安定な地域、社会における暴力志向の強い組織の需要に応じ、しばしば非合法な流通ルートで殺傷能力の高い小型武器が供給され、このような大量の犠牲者が出ていることは、本日議題となっておりますICCの基本理念への重大なる挑戦と言っても過言ではございません。
政府は既に外務省を中心にこの小型武器の問題に精力的に取り組んでいただいていると承知をしておりますけれども、ICC加盟後は、この非合法な武器取引、移譲を規制する武器貿易条約、いわゆるATTの制定に向けて特段の努力をしていただきたいということを強く要望申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕

○国務大臣(麻生太郎君) 遠山議員より四問いただいております。
まず、米国との二国間合意に関する我が国の対応についてのお尋ねがあっておりました。
米国は、米国の同意なく米国民がICCに引き渡され得ることを懸念し、すべての米国民について米国の同意なくICCに引き渡さない旨の二国間合意を締結することを各国に提案してきております。
日本といたしましては、国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪を犯した者の訴追を確保するというICCの趣旨にかんがみ、ICC規程の締結に当たり、このような二国間合意は締結しない考えであります。
なお、主なICC締約国であります、英、仏、独、伊などを始めとするEU諸国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国は、このような米国との間での二国間合意は締結していないと承知をいたしております。
次に、我が国のICCに対する貢献についてのお尋ねがありました。
ICCは、国際社会における重大な犯罪行為の撲滅と予防につき大きな役割を果たしてきたと考えております。我が国としては、このようなICCの重要な役割にかんがみ、ICCの加盟後は、ICCに対する幅広い貢献を積極的に行っていきたいと考えております。
具体的には、裁判官、またICC事務局職員への我が国出身者の送り込みなど、人材面での貢献を今後一層積極的に行ってまいります。また、ICCの効率的運用を図るべく、財政規律の確保も含め、ICCの運営に関する議論などにも、主要な締約国の一つとして積極的に参加をしていく考えであります。
続いて、二〇〇九年に招集されるICCローマ規程の改正を審議するための検討会議についてのお尋ねがありました。
二〇〇九年の検討会議における具体的な議題については今後調整をされる予定ですが、議員御指摘のとおり、侵略犯罪の定義とともに、核兵器を含む大量破壊兵器の使用、テロ行為及び麻薬犯罪などをICCの対象犯罪化とすることの是非について議論することが考えられております。
日本といたしましては、ICC加盟後は、主要な加盟国の一つとして、これら関連の議論に一層積極的に参加をしてまいりたいと考えております。
最後に、武器貿易条約についてのお尋ねがありました。
日本は武器輸出三原則の下、原則として武器を輸出しておりません。また、国連などにおいて小型武器を含む通常兵器の問題に積極的に取り組んできておりますのは、御存じのとおりです。
武器貿易条約の構想は、こうした我が国の立場と基本的に合致するものと考えております。日本は、これまでも国連への決議案提出や東京でのワークショップ開催などを通じ同条約に対する国際的議論に積極的に参加をしてきており、ICC加盟後もこうした努力を引き続き続けてまいりたいと考えております。(拍手)