○遠山清彦君 公明党の遠山清彦でございます。
 私は、ただいま議題となりました介護保険法等の一部を改正する法律案について、公明党を代表し、小泉総理並びに尾辻厚生労働大臣に質問いたします。
 議題に関する質問の前に、イラクの武装勢力に拘束されたとされる日本人男性の件について申し上げます。
 政府におかれましては、事件発生後、官邸や外務省を中心に対策室を設置し鋭意対応に当たっていると理解しておりますが、事は人命にかかわることであり、救出に向けて最大限の努力をされんことを強く要望申し上げます。
 さて、介護保険制度は、施行前は保険あって介護なしとの批判を一部で浴びましたが、重要な社会保険制度として着実に国民生活の中に定着してきております。導入時に二百十八万人だった要介護・要支援認定者の数は、今日四百万人を超えております。今後、団塊の世代が六十五歳を超え、高齢化率が二五%を超える二〇一五年に向け、この数は更に増加することが確実であります。
 今回の改正は、介護保険制度の初めての抜本改革であり、これまでの五年間の試行錯誤の経験と教訓を生かさなければなりません。また、利用者の増大に伴い将来の財政難が危惧される中、急激な保険料の上昇を抑制しつつ必要なサービスを確保、拡充する、言わば制度の持続可能性を高める改革が不可欠です。
 その意味において、私は、今回、公明党が強く推進してきました介護予防システムの導入が図られることの重要性を強調するものであります。高齢者が尊厳を保ち、健康な心身でより長く自立生活を送ることができる社会を目指す上で、生活機能の低下を事前に防ぐ予防重視型制度への転換は、今次の介護保険改革の目玉と言っても過言ではないと考えます。
 この認識を前提に、まず小泉総理に伺います。
 今回の改革の成否は、介護保険運営の主体者である市町村の取組に大きく依存します。法案が成立した場合、来年四月一日の施行に向け、要介護認定事務の変更、地域密着型サービス事務の実施、介護保険事業計画の策定、保険料改定の準備作業など、市町村は従来以上の責任を負わなくてはなりません。これは、地方にできることは地方でとの小泉内閣の進める地方分権の流れに合致している一方、準備期間が短い、市町村間のサービス格差が拡大する等の懸念の声も聞こえてまいります。これらの懸念に対する総理の見解、並びに市町村に対する期待をお聞かせください。
 また、今次の改正に併せ、厚生労働省は市町村の地域介護の中核拠点として地域包括支援センターを全国の約五千か所に設置する方針を示しております。この施設には、総合相談、介護予防マネジメント、包括的継続マネジメントなどの機能が整備されるとのことですが、各市町村においては、この業務に対応するため、社会福祉士、保健師、主任ケアマネジャーなどの専門的人材の確保、配置や研修体制の充実が求められます。すべての市町村が本当にしっかりとした業務体制を整えることができるのか、厚生労働省としてどのような支援を行っていくのか、厚生労働大臣の所見を求めます。
 地域支援事業で介護予防を効果あらしめるためには、こもりがちな高齢者や独居者など行政が把握しづらい高齢者をどう掘り起こすかが大きな課題となります。民生委員や保健師、自治会など地域住民の主体的な取組が重要となりますが、実効性を高めるために厚生労働省はどのように対応されるのか、お示しください。
 日本には寝たきりの高齢者が七十万から八十万人おり、先進諸国の中でも割合が多いとの指摘があります。寝たきりになってしまう主な直接的原因としては骨折や脳血管障害が挙げられておりますが、一方で病院や施設で適切なリハビリが行われていないという批判もございます。言わば、病院等によってつくられた寝たきりという指摘であります。介護施設においては、介護予防の導入で改善を図っていくことになりますが、病院等の他の施設も視野に入れたより包括的取組が必要と考えます。厚生労働大臣の見解を伺います。
 介護が必要な人に対して医師や看護師にしか認められていない医療行為について、現場で混乱が生じております。本年三月二十四日の厚生労働省の通知により、在宅におけるALS、筋萎縮性側索硬化症以外の療養患者、障害者についても、家族以外の方によるたんの吸引が例外的に認められました。しかし、介護現場では、つめ切りや検温など、元々医療行為に基本的に含まれていないものも医療行為に含まれているかのように認識されている場合があります。
 厚生労働省は、医療行為と非医療行為の区別について明確な基準を示すとともに、ホームヘルパーに例外的に認められる医療行為について幅広く周知を図るべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、予防訪問介護における家事援助サービスの実効性について伺います。
 現行制度下での家事援助サービスにおいても、利用者が、自立を促すヘルパーよりも何でもこなしてくれるヘルパーを選択するという問題が指摘されております。ヘルパーを替えることも事業所を替えることも利用者の意思によって可能であり、そのため、自立を促すヘルパーや事業所が仕事を減らし、利用者のために何でも行い、結果的に身体機能を弱めるような事業所が仕事を増やすという構図があるのです。この実態が改善されない限り、本人にできることは可能な限り自分で行うという予防訪問介護の実効性が担保されない可能性があると考えますが、厚生労働大臣の所見を伺います。
 現行制度に関連して、ケアマネジメントの中立性、公正性の確保の問題も今改革の焦点の一つであります。
 ケアマネジメントは、利用者の実情を正確に把握、評価し、自立支援の観点から必要な介護サービスが提供されることを保障する作業であり、介護保険制度のかなめとも言えます。しかし、現在それを担うケアマネジャーの九割以上が特定の介護サービス提供事業所に所属しているため、中立性、公正性に疑問符が付くケアプランの存在などが指摘されているのが実態です。今回の制度見直しで、この問題をどのように解決されるのでしょうか。私は、介護報酬体系の見直し等によって、独立したケアマネジャーの育成をより本格的に推進すべきではないかと考えますが、厚生労働大臣の御見解をお示しください。
 最後に、介護報酬の不正請求等の防止策について伺います。
 介護保険制度を真に持続可能な制度として育てていくためには、不正や無駄を徹底してなくす努力も不可欠と考えます。その意味で、介護報酬の架空・水増し請求や無資格者サービス、人員基準違反などを理由に指定取消しを受ける業者が後を絶たないことは誠に遺憾であります。
 今回の改正では、これらの問題に対応するため、市町村に施設への立入調査権を認め、都道府県には業務停止命令権を与えるなど、地方の権限を強化する方策が盛り込まれておりますが、それで本当に十分な防止効果を上げられるのかどうか、厚生労働大臣の所見と決意を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 遠山議員にお答えいたします。
 市町村の取組についてですが、今回の見直しにおいては、地方にできることは地方にという地方分権の考え方を更に徹底するため、身近な地域単位で提供される地域密着型サービスの導入やサービス提供事業者への立入り権限の付与など、保険者である市町村の権限、機能の強化を図っているところであり、市町村においては、今回の改正を踏まえ、住民の選択に基づいて創意工夫を凝らした制度運営を図っていただきたいと考えております。
 このため、厚生労働省において制度の円滑な施行に向けて各都道府県ごとにきめ細かく相談に応ずる体制を整備するなど、全面的な支援を行ってまいりたいと考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣尾辻秀久君登壇、拍手〕

○国務大臣(尾辻秀久君) 地域包括支援センターについてのお尋ねがございました。
 地域包括支援センターにつきましては、地域の様々な人的資源を有効に活用していくことなどにより体制を整えることは可能と考えておりますけれども、小規模町村などにおいて弾力的な職員配置が可能となるよう検討いたしますとともに、条例により、平成十九年度末までに新予防給付の施行を延期できることとする経過措置も設けるなど、配慮をいたしておるところでございます。
 地域住民の主体的な取組の推進についてのお尋ねがございました。
 今後、介護予防を推進していくに当たりましては、それぞれの地域において自主的な取組が進んでいくことが重要であると考えております。
 このため、今回の見直しにおきましては、地域支援事業として、自主的な地域住民活動の支援やネットワークづくり等に取り組むことにより、支援を必要とする地域の高齢者の早期発見と対応が行われるよう取り組んでいくこととしております。
 寝たきり高齢者対策についてのお尋ねがございました。
 御指摘のとおり、骨折や脳血管障害の高齢者が寝たきりになるのを予防するためには、早期から適切なリハビリテーション等を行うこと、また、こうしたリハビリテーションの継続性が確保されることが重要であります。
 このため、医療と介護の適切な連携を図り、急性期から回復期、その後の介護保険施設への入所、在宅復帰へ至るまで一貫したリハビリテーションが提供されるよう、必要な体制整備に努めていく必要があると考えております。
 介護現場での医療行為についてのお尋ねがございました。
 御指摘のように、高齢者介護や障害者介護の現場等において、医行為の範囲が不必要に拡大解釈され、混乱が生じているとの声も聞かれておるところでございます。
 このため、こうした状況も踏まえまして、医療機関以外の介護の現場等において判断に疑義の生じることの多い行為であって、原則として医行為ではないと考えられるものを列挙してお示しをした通知案を作成いたしまして、本年三月三十一日から四月三十日までの一か月間、一般からの御意見を募集をいたしました。現在、この通知案に対して寄せられました御意見について整理、検討いたしているところでございまして、今後、本通知の発出等により、できる限り疑義が生じないように対処することとしております。
 あわせて、ホームヘルパーに例外的に認められる医療行為の周知についてお尋ねがございました。
 御指摘のように、在宅においてたんの吸引を必要とするALS以外の療養患者、障害者の方に対する家族以外の方によるたんの吸引につきましては、平成十五年七月にALS患者の方に認めた条件と同一の条件の下に許容されるとの考えを本年三月に各都道府県、関係団体に通知しているところでございます。このような家族以外の方によるたんの吸引が安全に実施されるよう、通知でお示しした条件等について機会をとらえて周知をしてまいりたいと考えております。
 予防訪問介護の実効性についてのお尋ねがございました。
 介護保険制度は自立支援を目的としており、訪問介護の家事援助サービスの提供においても、利用者の持っておられる能力を生かしながらサービスを提供することが基本であると考えております。
 このため、今回の見直しでは、新予防給付のケアマネジメントにおいて、利用者ごとに改善の可能性をきちんと評価し、生活機能がいつまでにどの程度向上するかを個別具体的に目標設定をいたしますとともに、地域包括支援センターが中立公正な立場からサービスの実施後の状況を適切に評価し、必要に応じてケアプランや事業者の見直しを行うこととしております。
 ケアマネジメントの中立性、効率性についてのお尋ねがございました。
 今回の見直しでは、軽度者につきましては、中立公正な立場から地域包括支援センターがケアマネジメントを行いますとともに、ケアマネジャーについて更新制の導入などにより質の向上を図ることとしておりまして、ケアマネジメントの中立性、効率性の確保を図ってまいります。
 独立したケアマネジャーの育成についてのお尋ねがございました。
 ケアマネジャーの独立性を高めることは大変重要と考えております。このため、今回の見直しでは、独立性を高める方向での介護報酬の見直しや担当件数の見直しを行いますとともに、ケアマネジャーのキャリアアップを支援し、専門性を確立するため、事業所や地域において中核的な役割を担うケアマネジャーを育成するための研修の充実を行ってまいります。
 介護報酬の不正請求の防止等についてのお尋ねがございました。
 今回の見直しでは、保険者である市町村に事業者への立入り権限を付与いたしますとともに、都道府県等がより実態に即した指導監督ができるよう、事業者への改善命令や指定の停止命令等の権限を創設しております。これらの対応により、悪質な事業者に対する指導監督を徹底いたしますとともに、利用者への情報開示も推進し、悪質な事業者の排除と良質な介護サービスの確保に全力で取り組んでまいります。(拍手)