○遠山清彦君 公明党の遠山清彦でございます。
 今回の改正につきましては、公明党も強く推進をしてまいりました司法制度の改革の一環でございまして、いわゆる裁判外紛争解決手続の利用促進に資するために社会保険労務士の紛争解決手続における代理業務を拡大をするということでございまして、その意味では改正には賛成の立場でございます。
 ただ、確認をしておきたい点が幾つかございますので、伺ってまいりたいと思います。
 まず、改正案における第二条第一項第一号に新たに加えられる一の六に関連をして伺います。
 解雇、退職、また雇い止め等の効力を争う事案については、すべて紛争の価額が民事訴訟法第三百六十八条第一項に定める額、すなわち六十万円を超えるものとして弁護士との共同受任が条件となるというふうに解釈をしておりますけれども、厚生労働省、それで間違いないでしょうか。

○副大臣(衛藤晟一君) はい、間違いございません。
 六十万円を超えるかどうかは、民事訴訟の目的の価額に倣って算定すべきものという具合に考えており、民事訴訟法第八条一項の訴えで主張する利益と同様、当該紛争において主張する利益によって算定すると。したがいまして、この利益の価額が算定できないとき、極めて困難なときは民事訴訟法第八条第二項に倣って紛争の価額は百四十万円を超えるものとみなすことになりまして、解雇、退職、雇い止め等が対象の紛争はこれに当たるので、紛争の価額が百四十万円を超えるものとして取り扱うことになりまして、御指摘のとおり弁護士と共同受任することとなります。

○遠山清彦君 ありがとうございます。
 続きまして、厚生労働省にお伺いしますが、第二条第三項第二号に定められております手続の開始というものが具体的にどの時点を指すかということでございまして、先ほど小林委員の御質問に対する御答弁でもあったんですが、ちょっと質問を変えたいと思いますけれども、私は、先ほど、一般論として申立てが受理された時点であるというお答えだったというふうに思いますが、他方で、私が想定いたしますに他の時点、例えば申立ての通知が相手方に到達をして相手方がこれを了知し得た時点、あるいは相手方が当該紛争解決手続に応ずる旨の意思表示をした時点、あるいは第一回目の期日が開催された時点、こういった時点を手続の開始と見る可能性はあるのかないのか、その点についてちょっとお伺いをしたいと思います。

○政府参考人(青木豊君) 先ほど申し上げましたように、一般的には申立て、手続の申立てをして、それが受理された時点が手続の開始時というふうになると思います。そういう意味では、今おっしゃったそれぞれのところは議論としてはあり得るとは思いますけれども、手続の開始時とはならないのではないかというふうに思います。そういう意味で、手続の開始は申立て受理ということで、そういうことによって基準が客観的になるということもございますので、そういうことで考えております。

○遠山清彦君 ただ、先ほど局長御答弁で、各種のADRの手続によっては違う場合もあり得るということをおっしゃっていたような気しますが、その点は今の御答弁ちょっと違うような気するんですけれども、どうですか。

○政府参考人(倉吉敬君) 先ほど御答弁申し上げましたのは、ADRの手続の代理人となる場合の代理人の費用について民事法律扶助の援助対象にすべきかどうかと、その観点で申し上げたことでございます。

○遠山清彦君 ありがとうございます。
 それから、先ほどもちょっと相対交渉の件が出ておりましたけれども、私も一問質問させていただきたいんですが、申立てが受理された後に直ちに相手方と相対交渉を進めて和解を成立させてから申立てを取り下げるという、これは脱法行為になると思いますけれども、こういう行為が行われる懸念はないんでしょうか。

○政府参考人(青木豊君) 今の御質問は、すぐ取下げをするというようなことであります。実際に期日にならずにそういうことでやっていくということだと思いますが、これについてはやはり申立てを受理をして、それで代理ができるようになるということでありますので、範囲を超えるというふうに思っております。

○遠山清彦君 ちょっと歯切れの悪い御答弁ですが、私が申し上げたいのは、これは理論的には可能だと思うんですね。申立てを受理して、そして相対交渉を進めて和解を成立させてすぐ取り下げるということは行われ得ると私、考えておりますので、研修等でそういうことが行われないように適切に厚生労働省には対応していただきたいと要望をいたします。
 それから、次の御質問ですが、第二条第三項第二号及び第三号に反する代理行為が行われた場合、これは法務省にお伺いしますけれども、これは弁護士法七十二条に抵触すると考えていいのかどうか。また、その場合に、これらの違反する代理行為によって締結された和解契約の効力はどうなるのか、お答えいただきたいと思います。

○政府参考人(倉吉敬君) ただいまの御指摘の行為が弁護士法七十二条に違反するかどうかということでございますが、御承知のとおり、弁護士法七十二条は刑罰の構成要件を定めた規定でございまして、裁判所が事案ごとに、そこの構成要件で定められております報酬を得る目的、それから法律事件に当たるか、それから法律事務と言えるかといった、こういう構成要件に該当するかどうか、さらには違法性阻却事由があるかどうかといったことを個別に判断して認定するものでございまして、法務省が一義的にこれが違反するんだということは申し上げられませんので、その点は御承知いただきたいと思いますが。
 ただ、一般論として申し上げますと、具体的な紛争の解決のために当事者を代理して交渉や和解契約の締結を行うということは、弁護士法の七十二条に言う法律事件に関する法律事務に当たると解されます。このような行為を報酬を得る目的で業として行えば、この同条違反になると考えられるわけでございます。
 続きまして、その七十二条に違反する場合に、その代理行為によって締結された和解契約等々が無効となるかどうかという問題でございますが、この七十二条違反の私法行為の効力につきましては、公序良俗違反だということでその効力を否定する判例はございます。
 ただその一方で、その行為を信頼した和解契約の相手方ですね、相手方がこれは有効だと主張するような場合、そのような場合には、こちらから無効を主張するのが制限されるという場合もあり得るかなと。これも幾多の判例の傾向で考えられるところでございますので、結局は、申し訳ありませんが、個別の事案ごとに判断するしかないというふうに考えております。

○遠山清彦君 個別の事案ごとに法文に照らして御判断するということなんですけれども、ただ、今御答弁の中で、その要件に合致する場合には、この第二条第三項第二号及び第三号の業務の範囲を超える代理行為が行われる可能性はあると。
 そこで、厚生労働省に再びお伺いしますけれども、このような第二号、第三号に反する代理行為を行った社会保険労務士に対しては、どのような監視措置あるいは制裁措置というものが考えられているのでしょうか。

○副大臣(衛藤晟一君) 各都道府県社会保険労務士事務所、労務士会及び全国社会保険労務士会連合会に苦情処理相談窓口を設けまして、不適切な紛争解決手続代理業務を行った社会保険労務士に指導を行うということにいたしております。
 また、全国社会保険労務士会連合会に労使を代表する者や弁護士等によって構成された綱紀委員会を設ける予定でありまして、この綱紀委員会を通じて厚生労働大臣に懲戒事由の通知がなされた場合には、厳正に懲戒処分を行うことという具合にする予定でございます。

○遠山清彦君 分かりました。ありがとうございます。
 次の質問行かせていただきます。
 ちょっとややこしい質問になるかもしれませんけれども、この後に私が述べるような場合においては、当該社会保険労務士の行為が今回の改正法案に照らして脱法行為と判断し得るかどうか、その点についてお伺いをしたいというふうに思います。
 四つのケースを申し上げますので、ちょっとお書き留めいただきたいと思いますが、まず一番最初に、受任をして直ちに相手方と交渉しほぼ合意ができたので、行政型又は民間紛争解決手続を申し立ててその第一回の期日で和解した場合、これが一番目です。二番目の場合が、申立て書を提出して受理された後に相手方と交渉して、第一回の期日前に手続外で和解をし、手続を取り下げた場合。三番目が、第一回期日の後に、次回期日の前に相手方と交渉して和解をし、手続を取り下げた場合。そして四番目が、この二番目と三番目の場合に、合意が調った時点で、本人の名前、すなわち自分の代理人の名前を出さずに和解書を作った場合。
 これ、それぞれのこの四つのケースについてこれらの行為が行われた場合、脱法行為と判断し得るかどうか厚生労働省の見解を伺いたいと思います。

○政府参考人(青木豊君) まず一つ目の、受任して相手方とすぐ交渉して合意ができたということで、第一回期日で和解をするというものについては、その合意というのが申立て受理前の交渉によるものでありますので、これは二条三項二号、三号の範囲を超えるというものになると思います。
 それから、御指摘の二番目と三番目、申立て書が受理された後に、第一回の期日前に手続外で和解をするという場合と、それから、次回期日の前に、一回期日の後、次回期日の前に相手方と交渉して和解して手続を取り下げるというような場合。これにつきましては、手続外で合意が成ったと、そういう合意に基づく和解契約を締結するということについての代理ということになりますので、これはもう二条三項三号の事務には含まれないというふうに思います。
 それから四つ目の、合意が調った時点で本人の名で、自分は代理人として名前を出さずに本人の名でやるという場合でありますが、形式的にはこれは本人ということで代理ということではないわけでありますけれども、本人の名で和解契約を締結したとしても、実質的には手続外で調った合意に基づく和解契約の締結の代理ということでありますので、やはり二条三項三号の事務には含まれないというふうに思います。

○遠山清彦君 それで法務省に伺います。
 今、この御答弁いただいたようなケースで成立をしたというか締結をされた和解の効力はどうなるのか、お答えいただきたいと思います。

○政府参考人(倉吉敬君) まず弁護士法七十二条に違反するのかということ問題になるわけですが、先ほど申し上げましたとおり、法務省において一義的にただいまの行為が同条に違反するのかということを申し上げることはできません。
 ただ、お含み願いたいと思いますが、一般論として申し上げれば、ただいま先生の方から御指摘のありました社会保険労務士の行為は、いずれも具体的な紛争の解決のために当事者を代理して交渉や和解契約の締結を行ったもののようでございます。そうであるとすれば、弁護士法七十二条に言う法律事件に関する法律事務に当たると解される可能性は大きいのかなと、そのような行為を報酬を得る目的で業として行えば同条違反になり得る可能性は強いと、そういうふうに考えております。
 この社会保険労務士の代理行為が弁護士法七十二条違反となる場合に、当該行為により締結された和解契約が無効となるかどうかにつきましては、これも先ほど申し上げましたとおり、この同条に違反する私法行為の効力を公序良俗違反ということで無効とした判例がある一方で、その行為を信頼した相手方が登場している場合、その相手方の信頼を裏切ることはできないんではないかということを考えなければいけないと。こういうケースでは無効の主張が制限されるといった、そういう場面もあり得るのかなと考えられますので、結局、個別の事案ごとに判断されるものと思われます。

○遠山清彦君 最後の質問になりますけれども、尾辻大臣にお伺いをいたします。
 先ほども出ておりましたけれども、今回の改正で社会保険労務士の労働争議への介入を禁止する規定が削除されることになっております。これに関連して伺います。
 労働争議において社会保険労務士が一方の当事者の代理人として他方と交渉するということは、今回の改正でも社労士の業務ではないと解釈をされますけれども、これで間違いないでしょうか。また、この点については世間で若干誤解があるようでありますけれども、この正しい趣旨を周知徹底をする必要があると思いますけれども、それはどのように行っていくのか、お伺いをいたします。

○国務大臣(尾辻秀久君) 労働争議不介入規定の削除をいたしました。その結果、社会保険労務士は、争議行為が発生いたしまして、あるいはまた発生するおそれがある状態におきまして、当事者の一方の行う争議行為の対策の検討、決定等に参与するような相談・指導業務を行うことが、これはできることになりますけれども、労働争議の団体交渉において一方当事者の代理人となることについては、この相談・援助業務に含まれませんから、含まれませんから、社会保険労務士の業務として行うことはできないものでございます。
 そして、お話しのように、このことについて誤解もあるようでございますから、通達において明確にいたしまして、全国社会保険労務士連合会に対して適切に指導をしてまいりたいと考えております。

○遠山清彦君 以上です。