○遠山清彦君 

公明党の遠山清彦でございます。

 私は、今日はちょっと代理の、同僚議員の代理の出席でいるんですけれども、常任委員会の方で外交防衛委員会の方におりまして、中東の方に関しても今までも若干質問させていただいておりますので、今日は提示された資料なんかも見て、二つお聞きしたいと思うんですけれども。

 一つは、イラクに関してですが、中東二課の「最近のイラク情勢」という資料を見ても余りはっきりと書いていないんですが、既に外務省の方でも報道で御承知だと思いますけれども、今イラクの方の情勢は実際には悪化をしていると。それはサダム・フセイン政権の内部で悪化しているということではなくて、正に米国がいわゆるサダム・フセインの反体制勢力との連携を強化をして、軍事的な意味も含めて行動を取ろうとしているのではないかと。

 これは日本の新聞ではそれほど報道されておりませんが、既に海外のロイター電とかあるいはイギリスのガーディアンとかインディペンデントとか、そういった新聞はかなり詳細に報道しておりまして、英語ではマター・オブ・タイムと。つまり、アメリカが何らかの形でバックアップをした反体制勢力がサダム・フセイン政権に対して何か行動を取るのではないか、これがもう時間の問題であるというような報道がされております。そのことはこの資料には全く出ておりませんが。

 私は、今イラクと日本の二国間関係というのは事実上外交チャンネルが非常に狭められている状況だと思うんですが、今日いただいた資料を見ましたら、イラクは日本の在京大使館を維持しているということが書いているわけでありまして、東京にイラクの大使館があるということでありますから、何らかの外務省、接触なり意見交換なりあるのではないかと。

 そういった部分で、このイラクにおける、米国がどういう形でかかわるかという詳細については、これ報道だけですから実際のところ分からないわけですけれども、しかし海外の報道を見ていますと、例えば明日、突然イラクで何か起こっても余りおかしくない状況かなと私は個人的に理解をしておりますので、それに対して外務省としてどう対応されようと現時点でしているのか、ちょっとお伺いをしたいというのが一点目でございます。
 二点目は、もう既に佐藤先生がちょっとおっしゃられてしまった同じような発想からの質問なんですが、角度ちょっと逆でして、それは、私、以前イギリスに私事で恐縮ですが留学をしておりましたときに、イランとかイラクからも数多くイギリスの大学、大学院に留学生が来ております。

 そこで私が一番驚いたのは、イラクから来たお医者さんの方が、イラクのテレビ局というのは二局あると言っておりまして、黒澤明の映画とまたNHKの連続朝のドラマで特に「おしん」、もう「おしん」に至っては十八回ぐらい再放送されたと、今から十年前で、もうもしかしたら今三十回ぐらいになっているかもしれませんが、言っておりまして、彼は私に、「おしん」の第十七話でおしんのお母さんがおしんにこう言った言葉に感動しなかったかとか、そこまで具体的な質問を私にしてくる。ですから、もうほとんど「おしん」のストーリーを暗記をしているような方に私、出会ってショックを、私はおしんのお母さんがその話の中で何と言ったか覚えていなくて大変に怒られまして、おまえは日本人のくせにそんなこと知らないのかと言われて怒られた記憶があるんですが、それぐらい日本のドラマがイラクの方々に受けているというか、共感を持って見てもらっているというのが、私にとって新鮮な驚きでありました。

 実際、彼は、当時、実は湾岸戦争直後のときで、大変西洋、日本とイラクの関係というのは最悪の状況だったんですが、にもかかわらずこういった「おしん」の話が出る。また、彼いわく、イラクのテレビ局二局あるんですけれども、両方のチャンネルで日本の番組をやっているときがあって困ったことがあるなんていうことまで私、聞いておりました。

 また、同様にイランでも、私が知っている範囲では大変日本の時代劇等が、何か向こうのやっぱりイスラムの宗教では肌が余り露出するとか、男女が絡み合うようなシーンが多いものは余り良くないと。日本の「水戸黄門」のような番組はそういうシーンないですから、非常に向こうでは幅広く流されているというようなことも聞きまして、私はこれを聞いて、やはり欧米にはできない日本の、正に佐藤先生もおっしゃっていた文化とか芸術あるいは映画、映像文化ですね、そういった次元では交流というのをもっと強力に進めていくことが大事なんではないか。

 当然、中東の文化をもっと日本、イスラムの文化、芸術をもっと日本へという流れも当然なんですが、もう既に私が今私の個人的な体験の中から一端申し上げたとおり、向こうでは私たちが想像する以上に日本の文化を好んでいらっしゃるというか受け入れている。そのことを実は日本人が余り知らないという実態があるんじゃないかなというふうに個人的に思っております。私も留学に行ってそれを初めて知ったわけですから。

 そこで、やっぱりもっと政府も後押しして日本の文化、映像、芸術のフェスティバルみたいなものを向こうで開催を大々的にやって、その上でやはりイランとか、イラクはちょっといろいろありますけれども、日本にしかできない形でパイプを太くしていくということが大事なんではないかと。

 最後に、アメリカもクリントン政権下でイランとハタミ大統領が出てきて交流を進めたときに、たしかレスリングの交流をやられたと。私、実は機会がありまして、このレスリングの交流をおぜん立てしたのは実は政府ではなくて、アメリカ政府ではなくて、NGOの紛争予防を専門にしているサーチ・フォー・コモン・グラウンドというNGOがありまして、ここは紛争予防という非常に新しい分野をメーンの業務活動にしながら実は大変に大きなアフリカ、中東で活動をしているNGOなんですが、このNGOのリーダーに私、個人的に会ったときに、実はアメリカのレスリング交流の話のおぜん立てを水面下で全部付けたのはこのサーチ・フォー・コモン・グラウンドであると、彼は本当にそういうふうに言っておりました。

 実際に、今これにアメリカ政府が乗る形であのレスリングの交流を実現したということもありまして、ですから私も日本のNGOで中東方面で活動をしているNGOがどれぐらいあるのか、またどれぐらいの規模かということは分かりませんけれども、やはり外務省もNGOとの連携というのを打ち出しておりますから、そういった中東である程度活動の基盤を持った日本のNGO辺りとまた連携をしながら、こういうアメリカでも起こった草の根レベルでの交流を後押しするようなことが大事なんではないかと思いますけれども、この二点についてお伺いしたいと思います。

○副大臣(杉浦正健君) 

イラク以外の問題、「おしん」の方はこちらに任すといたしまして、イラクの問題については報道でいろいろされていることはもう十分承知しております。ただ、この間の日米首脳会談でも首脳同士の間でそういう話は一切出ていないようでございますし、公式にアメリカ攻撃すれば日本どうするというようなお話は、まだ政府間ではないと私は承知しております。認識しております。ただ、そういう心配が国際社会にあることは間違いありません。

 御案内のとおり、先ほど申しましたが、イラクが原子爆弾、生物化学兵器、大量破壊兵器を開発している疑いは払拭できておりませんし、それを運搬するミサイル、三千キロ射程といいますからイギリスの果てまで入っちゃうんじゃないでしょうか。そういうミサイルももう開発が済んだとか済まないとかいうような話も伝わっておりますので、これはアメリカのみならずヨーロッパ社会も含めて、本音でこれは何とかしなきゃいかぬという気持ちでいることは間違いないと思います。ですから、そういう状況にあることは間違いないと思います。

 で、日本、我々のスタンスとしては、国際社会と協力してイラクにともかくそういう事態を回避しろと、その査察を受け入れて疑念を晴らしなさいということを機会あるごとに言っておるわけでございます。

 向こうは、大使館があって、臨時代理大使がおって、館員が二、三人おります。ムーサという臨時代理大使がこの間離任されましたが、また代わりの臨時代理大使が来られますけれども、その臨時代理大使とうちの局、課は非常に親密な関係でございまして、しょっちゅう本音で話し合っておるようでございます。私も個人的には親しい人で、機会あるごとに話をしておるんですが、私の受ける印象では、アメリカの攻撃はあり得る、真剣だと、あらゆる選択を排除していないというのは伝わっておるようでして、イラクも口先だけじゃないぞという感じで受け止めておられるようで、真剣に対応されるんじゃないかという印象を個人的に受けております。

 将来、アメリカがどういう態度を取られるか、現時点では分かりませんが、日本としてはそういう事態を回避する、要するにイラクに査察を受入れさして、そして国連がやるわけですが、国際社会にイラクが門戸を開いて、完全に、そして、国際社会が持っている懸念を自らの手で払拭してもらうように最善の努力を払うということが必要になるんじゃないかと思います。日本の大使館は閉鎖していませんが……

○遠山清彦君 ジョルダンですね。

○副大臣(杉浦正健君) 

ジョルダンに二、三人、班があって交代で行っているんですね。フルにいないんですよ。内部では、もう少し充実して常時一人、人がおれるぐらいにしたらどうかというようなことを言って検討しておるところであります。

 ただ、現実問題として日本とイラクの交流はございませんで、ともかくあの国は湾岸戦争で企業の人たちをみんな人質に取って、人質という、ヒューマンシールドというんですか、やったものですから、もう企業の人が震えちゃってもう近寄らないんですよ、また攻撃があるかもしれないというので。ですから、実際、大使館を再開する、情報を取るとかそれから向こうの国とコンタクトを取る意味は必要でございますので、企業も人もいないものですから、ほとんど。そういう意味では大使館を、常時人を置いておくという意味は余りないんですけれども、情報を取るとか向こうの国とのコンタクトということでもう少し強化したらどうかということで今相談しておるところでございます。

○政府参考人(城田安紀夫君) 

それでは、大変貴重な御意見をありがとうございました。

 一番最初におっしゃられた、イラクでの今、イラクの人がロンドンに留学して、いろいろ「おしん」の件なんか言っていたというのは大変私自身も心打たれましたけれども、今おっしゃった例に大変よく出ておりますように、私ども外交当局としてほかの国とお付き合いをしていくときに、情勢がどう変わっても、政策がどういうふうになっても大事なことは、その国の国民が日本に対して親近感を持って、ああ日本というのはいい国だな、日本人というのはいい人たちだなと、こういう気持ちがずっと後の世代まで残っていく、それが続くようなことを、何というか、私どもとして努力していくということをやっていくのが一番大事なんだろうというふうに思っております。

 そういう点から、おっしゃった「おしん」のテレビもそうですし、黒澤明の映画もそうですけれども、最近あの地域で、更に若い層でアニメ、日本製のアニメーション、漫画というのが大変よくテレビで見られておりまして、これが日本の、何というか、風景、日本の生活ぶりが絵になっても出ておりますし、それはそれで、ずっとこういうことも大使館経由等で貢献できるところは貢献していきたいと思っております。

 それから、つい先々週ですけれども、大学選抜のサッカーのチームを日本から中東に派遣いたしました。さっきイランのレスリングの件をおっしゃったので思い出しましたけれども、今度、ワールドカップが日本、韓国で行われる際に、中東地域からはトルコ、サウジアラビア、チュニジアと、この三つの国から代表チームが来ることもありますし、それに先立って日本側から行ったと。で、大変友好関係を強めてきたという報告を受けました。

 それから、私ども政府当局者がこういう、何というか国民同士のいろんな橋渡しをどこまでやるかについてはなかなか微妙な問題ももちろんございますが、もちろん自主的なああいう動きが前提になりますが、それでお助けできるところがあれば私どもお手伝いさせていただくというのが基本的な立場だろうと思います。

 そういう点で、今御指摘のNGO、中東地域で草の根の協力を進めるNGOがどの程度育っているかについては、正直言って余りまだないとは思いますが、最近、日本の若い女性層、大学生なんですけれども、が中東地域でアラビア語の勉強に行くという人が随分増えてきておりまして、そういう点で、これから先そういう努力あるいは希望が集まって、新しい懸け橋になっていただければというふうに思います。

○政府参考人(奥田紀宏君) 

先ほどの副大臣の御説明に若干付け加えるところがあるとすれば、反体制勢力を集めてアメリカが会議をやるのではないかという御指摘がございました。

 これについて、実は私も、若干の報道等で読む以外に、直接の担当ではないのですけれども、アメリカの部内の人と話をしたことがございます。それで、このような反体制勢力を集める会議というのはどうもあるようではありますけれども、私どもが理解している限り、例えばこれを、この機会にその反体制勢力を集めて亡命政権の樹立を例えば宣言するような、そういったものにはならないであろうというような感触を持っております。例えば、アフガニスタンの場合には、これはボン合意でカルザイ議長が首班となるような暫定行政機構というのをつくって、つくりつつ、かつ、タリバン政権の放逐ということをアメリカはやったわけでありますけれども、恐らくそういう話とは別ではなかろうかというふうに思っております。

 それから、イラク情勢でございますけれども、これが悪化している、大変悪化しているという御指摘でございますけれども、これは、いろんな角度で見た場合に悪化しているということも言えるのかなとは思いますけれども、他方、クルド、北部のクルド人が多いところの三つの地域を除きますと、サダム・フセイン大統領はほぼイラク全域を、それらを除いた全域についてはかなりの確度で掌握しておって、そういう意味では、それを悪化と言うかどうかは別なんですが、安定はしているというふうに我々は思っております。治安情勢は、その意味では今のところは安定しているというふうに思っております。

 それから、二国間関係でございますけれども、実は九月十一日のテロの前の辺りまでは、我々は、イラク、バクダッドにおける我々の事務所、これは現地のイラク人が維持をしておるわけですけれども、その事務所に常に日本の外交官がいるような形で持っておったわけでございますけれども、テロが起きた後、いろいろと危険の問題もあるものですから、それがいつも我々日本から来ている外交官がいるという状況になっていないというふうに変わったということでございます。

 以上でございます。