国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の総理報告に対する代表質問

平成26年3月18日
公明党 遠山清彦

私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました、政府が昨年12月17日に閣議決定した、「国家安全保障戦略」、「防衛計画の大綱」、及び「中期防衛力整備計画」に関連し、安倍総理、外務大臣、防衛大臣に質問いたします。

地方分権が進められている今日においても、外交および安全保障に関する諸政策は、一義的には国の責任の下に決定し、遂行されるべきものであります。その点から、昨年、国家安全保障会議(NSC)が設置され、政府与党内の議論を経て、戦後初となる「国家安全保障戦略」という文書を従来の「国防の基本方針」に代えて策定したことは、大きな歴史的成果だと考えます。

しかし、まず、大切なことは、我が国が掲げる基本理念であります。

「国家安全保障戦略」の中で、それは、「平和国家としての歩みを引き続き堅持し、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定を実現しつつ、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保にこれまで以上に積極的に寄与していく」とされています。ここで最も大切な点は、日本は「平和国家」としての地位を今後も堅持することです。

戦前の一時期、日本が他の国々への侵略と植民地支配によって多大な犠牲と苦痛を他国民に強いたことは事実であり、そのことへの猛省が戦後日本の平和国家の起点になっております。この点で、安倍総理が先般、現政権下で「河野談話を見直さない」、「村山談話を継承すること」を明言されたことは、率直に評価させていただきたいと思います。

その上で、戦後日本が築いてきた平和国家の内実とは何でしょうか。結論を先に申し上げれば、日本は単に「国連憲章を遵守する」だけの平和国家ではない、と考えます。

日本に限らず、国連加盟国が国連憲章を遵守するのは当然です。しかし、日本の場合は、それに加えて、憲法九条の平和主義の下に海外で武力行使をしないという姿勢を一貫してきたこと、唯一の被爆国として非核三原則を堅持し軍縮をリードしてきたこと、武器輸出三原則等で武器貿易を厳格に抑制してきたこと、などが含まれる平和国家としての地位を今日まで築いてきたのではないでしょうか。この点について、安倍総理の認識をうかがいます。

武器輸出三原則等の見直しについては、現在与党PTで防衛装備品の移転の新原則として策定内容が協議されておりますが、一部報道等で誤解を与えるものがあります。すなわち、この見直しで「武器輸出が全面解禁される」というものです。私たちが現在議論している方向性は「全面解禁」ではなく、今後も「禁止される輸出」と、昭和58年以来21回にも渡り例外化されてきた「許可しうる輸出」についての基準を整理・明確化し、適正審査と厳格管理の体制を強化するものです。

ただし、平和国家として、基準に適合したと判断された輸出が恣意的に運用されていないか、国民がチェックできることは極めて重要です。そこで総理に提案いたします。新原則の下での防衛装備品の移転・輸出については、類型ごとに全体の許可件数、輸出額、及び輸出先を記し、かつNSCの個別判断を検証できる情報も記した「年次報告書」を国会に提出し、当初案よりも一層の透明化を図るべきである、と考えます。総理の見解を伺います。

次に、日本の国益上、エネルギー資源等の輸送路である海上交通路の安全確保は重要であります。その観点から協力国への「救難、輸送、警戒監視及び掃海に関する装備品の輸出」も現在検討されているわけですが、この分野はそもそも警察権に基づく海上保安的要素もあり、装備もさることながら人材育成が喫緊の課題と言えます。しかるに、協力国として想定されるアセアン諸国の海保分野の人材育成は遅れており、日本からのさらなる能力向上支援のニーズが高まっております。そこで、この際、政府として、防衛交流に準ずる海保交流支援を実施するために十分な予算を確保すべきと考えますが、総理の方針を伺います。

国家安全保障の車の両輪は防衛力と外交力であることは論を待ちません。安倍総理の総理就任後の精力的外交活動には心から敬意を表します。しかし、我が国が目指すアジア太平洋地域の平和と安定の実現のためには、近隣諸国との関係改善は不可欠であります。単刀直入に申し上げますが、まず日韓首脳会談を今月オランダで開催される核セキュリティサミットの際に是非とも開いていただきたい。そして、日中についても、不測の事態を避ける信頼醸成メカニズム構築のための外交努力を粘り強く展開していただきたい。

同盟国である米国のリバランスポリシーの本質は、中国の急速の台頭という安全保障環境の変化を平和的に管理することであり、そのことを踏まえた戦略的外交を総理のリーダーシップの下に展開されることを切に望むものであります。総理の御決意を伺います。

日朝関係については、横田めぐみさんのご両親が、めぐみさんの娘であるウンギョンさんらとモンゴルで初めて面会したという展開に接し、安倍政権の拉致問題解決への強い決意を感じたところであります。今後、現在の日朝間の課長級非公式協議を局長級の公式協議へ格上げするとの報道がありますが、この協議で政府として何を目指すのか、岸田外務大臣の答弁を求めます。

政府はサイバー攻撃への対応能力の一層の強化も、目標に掲げています。内閣官房情報セキュリティーセンター(NISC)の最新資料によれば、サイバー空間における政府機関への脅威・攻撃件数は、すでに1分間に2回の頻度に達しており、金融、航空、鉄道、電力などの重要インフラへの攻撃も増加の一途をたどっております。

政府においては、これまでもサイバーセキュリティ政策の推進体制を強化してきておりますが、まだ不十分な面があります。特に、内閣に置かれている「情報セキュリティ政策会議」とその事務局であるNISCが法的基盤を欠いていることは致命的と言っても過言ではありません。早急にサイバーセキュリティに関する基本法を整備し、より実効性の高い対応ができる体制を整えるべきだと考えますが、総理の見解を求めます。

今次防衛大綱では、純然たる有事でも平時でもないグレーゾーンの事態が増加・長期化していることを指摘し、そういった事態を深刻化させない方針を示しております。しかし、従来の自衛隊の出動類型で言えば、こういった事態に対しては「海上警備行動」や「治安出動」など、自衛権でなく警察権に基づく出動で対応する整理がなされてきたはずであります。今次防衛大綱であえてグレーゾーンの事態への対応強化を打ち出した背景にはどのような問題意識があるのか、小野寺防衛大臣の答弁を求めます。

最後に、集団的自衛権の問題について、総理に二点うかがいます。総理は、最近の一連の国会答弁において「集団的自衛権を日本は主権国家として国際法上保有するが、憲法上その行使は許されない」という政府の公式見解を変える方針を示しておられます。この立場を支持する根拠の一つとして「権利として保有しているのに、それを行使できなければ権利とは呼べない」という主張がしばしばなされます。しかし、安全保障分野に限らず、国際法上の権利と国内法上の制約が相克・矛盾した場合、政府は国内法上の制約を優先して行政権を執行することが先進諸国の通例であり、現在の政府見解は妥当であると考えますが、総理の率直なご意見を伺いたい。

また、集団的自衛権の行使容認により、日米同盟の片務性を解消すべき、という主張も散見されるところです。すなわち、「日本が攻撃された時、米軍は日本を守るが、逆のケースで日本が何もしないのは同盟国としておかしい」という主張です。しかし、日米同盟は「米国が日本防衛をコミットする代わりに、日本は米軍への施設を提供する」ことで双務性を担保した形になっており、また日本有事の際には自衛隊も個別的自衛権に基づき出動することから、特段の片務性はないというのが従来の政府見解ではなかったでしょうか。この点についての、安倍総理の御見解を伺い、私の代表質問を終わります。