平成 25年 3月 15日衆議院法務委員会速記録(議事速報)

○石田委員長
次に、遠山清彦君

○遠山委員
谷垣大臣、後藤副大臣、盛山政務官、改めて御就任おめでとうございます。
特に、谷垣大臣につきましては、自民党総裁や財務大臣初め数々の要職を歴任されておりまして、そのような谷垣大臣を法務省に迎えたということは大変喜ばしいことだというふうに思っております。心から御活躍を期待申し上げます。

また、私も、若輩、非力でございますが、本年から公明党の法務部会長を任命されました。また、私、後ろに座っております鳩山法務大臣のときでございますけれども、参議院の時代に一年間法務委員長をさせていただきまして、法曹界出身ではございませんけれども、法務行政の重要性については理解をしているつもりでございます。しっかり与党の法務部会長の立場でまた法務行政を支えてまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

きょうは、まず、朝から同僚委員からも御質問が続いておりますが、大臣の所信にもありましたとおり、世界一安全な国日本の構築というのがやはり政府の、特に法務省の大きな課題でありまして、私もその柱は再犯防止対策だというふうに思っております。

もう大臣重々御承知のとおり、犯罪白書や法務省の資料で示されておりますとおり、犯罪者の約三割が再犯者でございます。この三割の犯罪者によって、日本で起こっている犯罪の六割が、正確には五七%という数字でございますが、惹起をしているということでございます。

再犯者の数を減らすということが大きな課題であるということがわかるわけでございますが、私は、この対策で一番大事なキーワードは、やはり住まいとそれから雇用、この二つだというふうに思っております。

その証拠ではありませんけれども、法務省の資料におきましても、刑務所を出所したときに適当な帰住先、帰る場所があった人となかった人を比べますと、刑務所を出たときに適当な帰る場所がなかった人の約六割が出所してから一年未満に再犯をしているという数字が出ております。

また、職につきましては、保護観察中に職がなかった人の再犯率、これは職があった人の約五倍ということでございますから、刑務所を出所した後に再犯に走るか否かという問題と、出所した後に住まいと雇用があったかなかったかという問題は、高い相関関係にあるということがわかっているわけでございます。

そこで、まず最初の質問になりますけれども、法務省の資料では、まず刑務所を出所する人の約半数が満期釈放者である、そのさらに満期釈放者のうち約半数が適当な帰住先、帰る場所、住まいがないということになっております。

そこで、質問を二つに分けたいと思いますが、一つは、満期釈放者のうち半数の人が出所しても行くところがない、この人数、大体何人ぐらいの方が帰る場所がないのか。それから、法務省として、では、刑務所を出た後に行き先がない人たちに対してどうやって住まいを確保していくかということについてどういう対策をとってきたのか、また、特に来年度以降、どのような新たな対策をとろうとされているのか、その点について御説明をいただきたいと思います。

○谷垣国務大臣
遠山委員から過分のお言葉をいただきまして、大変恐縮に存じております。大臣所信でも申し上げましたように、法務行政、本当に大事な分野でございます。全力を挙げて取り組みたいと思いますし、また、遠山委員におかれましては、与党公明党の法務部会長として、またいろいろ御指導、お教えを賜りたいと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

その上で、今のお話のとおり、再犯防止のためには、もう一回施設を出ていったときにやはり居場所がなければいけない、おっしゃるとおりでございます。

そこで、今、まずおっしゃいました、平成二十三年度ですが、刑事施設から出所した者の総数は二万八千五百八十三名でございます。そのうち、満期釈放された者は、ほぼ半数の一万三千九百三十八名でございます。この満期釈放者のうち、六千六百十七名、約半数でございますが、出所時に、親族であるとか知人であるとか、あるいは雇用主、あるいは更生保護施設等々といった適当な帰住先、帰るところがないというのが実態でございます。

そこで、こういう適当な帰住先のない満期釈放者について今まで何をしていたかということでありますが、その方たちから更生緊急保護の申し出がございますと、そういうときは、それに基づきまして、更生保護施設がございますから、そこに宿泊、保護等々の委託を行うということをやってきたわけであります。

それから、平成二十三年度からは、緊急的住居確保・自立支援対策という名のもとに、NPO法人等への委託を実施するということをやってきております。

今後とも、関係省庁だけではなくて、特に、やはりこの場合は民間団体等の御協力を得るということは極めて大事でございますので、そういう民間団体とも緊密に連携しながら、満期釈放者についても適当な帰住先を確保していく、これに大いに努めたいと思っております

○遠山委員
ありがとうございます。今、大臣みずから数字を言っていただきましたが、六千六百十七名の方が帰住先がないと。そうすると、先ほど私が出した数字でいうと、帰る先がなかった人の約六割が一年未満に再犯しているということを考えますと、六千六百人の六割ですから約四千人近い方が一年未満にまた犯罪を犯してしまう可能性がある、これは法務省のデータ上そうなっているわけですね。

だから、ここの数を減らしていけば、日本で起こっている犯罪全体の数を減らすことが一番効率よくできるという認識を、我々国会で、また政府で共有をして、対策の強化をしていかなければならないと思います。

その上で、次に、就労の問題を伺いたいと思います。これはもう大臣御承知のとおり、刑務所の出所者は、本人の資質や前歴の問題もありますし、また、基礎学力の欠如、あるいは資格を一切持っていないということがございまして、なかなかよい就労先の確保というのは難しいんですけれども、法務省として、この問題にどのように取り組み、成果を上げていくのか、まず、大臣の御決意を伺いたいと思います。

○谷垣国務大臣
先ほど遠山委員がおっしゃったように、保護観察中に無職であった者の再犯率、これは有職者の五倍あるというのが現状でございます。ですから、刑務所出所者等の職をどう確保
していくかというのは、これは再犯防止や安全な社会をつくっていくためには極めて大事であることはもう申すまでもございません。この点は、行政でいえば、厚生労働省との連携がまず必要でございまして、平成十八年度から実施しております刑務所出所者等総合的就労支援対策、ちょっと舌をかむような名前でございますが、これによりまして、これまで約一万二千七百人が就労するに至っているわけです。

このほか、就労確保に向けた取り組みとしては、刑事施設への就労支援スタッフというものをやはりある程度きちっとしておかなきゃいかぬということがございます。それから、雇用情勢の動向とかニーズを無視してやっていても仕方がありませんので、そういうものを踏まえた職業訓練を充実させていくというようなこと。

それから、雇用促進のため、やはりこれも民間のお力をかりなきゃいけないという典型的な例ですが、協力雇用主に行政としていかなる支援をしながら雇用に御協力いただき、雇っていただけるかということも非常に重要な点でございます。

それから、民間のノウハウを生かして、就職活動支援から職場定着支援まで継続的にきめ細やかに行う、寄り添い型と言っておりますが、そういう寄り添い型の支援である更生保護就労支援モデル事業というのを今推進しているところでございます。

これも、先ほどの帰住先と同じように、行政の連携だけでできるものではありません。民間のお力をいかにかりて、民間に助けていただき、協力しながらやっていくかということに意を用いてまいりたいと思っております。

○遠山委員
大臣、大変丁寧な御答弁、ありがとうございます。実は、今大臣の答弁の中にも出てまいりました協力雇用主の皆さん、この協力雇用主というのは、改めて確認をしますけれども、犯罪や非行をした人の前歴にこだわらずに積極的に雇用していただいて、その更生、立ち直りに協力する民間の企業の事業主の皆さんのことでございます。

実は私、地元の一つが福岡でございまして、福岡の地元の協力雇用主の皆さんと大変深い交流がございます。皆さん、やはり社会貢献の一環として、出所者等あるいは非行少年、少女を雇うというのはさまざまなリスクがあるわけですけれども、それを承知の上で、立ち直りに協力するということで雇用していただいているわけです。

きょうお配りした資料の一をちょっと見ていただきたいと思います。野口義弘さんという方の日経新聞に載ったインタビュー記事でございますが、この野口さんという方は、福岡県連合協力雇用主会の会長さんでございます。私、常に御指導いただいておりまして、この方は、北九州市内で御自身が経営する三カ所のガソリンスタンドで、約十七年間にわたって、もう既にことしでは累計約百人の非行少年、少女を中心に雇用していただきまして、立ち直り支援活動をしてきております。

インタビュー記事は後ほど読んでいただければいいんですが、ちょっとこの記事の下の方、上から五段目ぐらいのところを見ていただきたいんですが、野口さんの発言として、「面接にきた子ども」これは非行少年、少女のことですが、「は必ず雇うようにしています。せっかくこれから立ち直ろうとしているときに、面接で断ってはそこでまた「やっぱりおれなんて」となってしまう。それでは意味がないですから。先入観を持たずに接したいので犯罪歴や補導歴も自分から話してくれるまで聞きません」。

そして、その後のインタビュー項目で、そういう方々を雇っておりますといろいろな事件があります。ここに書かれているのは、十七歳の少年を雇ったら金庫のお金を盗んだと。そこで彼は何と言っているかといいますと、「もちろん最初は腹が立ちました。でも生まれながらに悪い人間なんていません。居場所がない寂しさから非行に走る子も多い。そこで誰かが手を差し伸べないと本当の悪人になってしまう。この人は自分が困ったときに助けてくれる人だと気づけば、その瞬間に子どもは心を開きます。」こういうお答えをされて
おります。

私、野口さんと何度か直接お会いをして、お話をいたしました。このインタビューでは尽くせないさまざまなエピソードを私も直接伺いましたし、特に北九州という土地柄、暴力団とのかかわりがありまして、非常に大変なんです。はっきり言うとそういう組織から野口さん自身がおどされたことは何度もあるわけでございますけれども、それを毅然とはねのけてこういう活動を続けているわけでございます。

ですから、大臣、こういう方々が全国でふえますと、当然に再犯者の数を減らすことにつながっていくわけでございまして、これは御答弁は要りませんけれども、私の要望として、ぜひ大臣、お時間のあるときに協力雇用主の方々とお会いをしていただきたい。もし福岡に来る機会があれば野口さんを御紹介いたしますし、また、全国にこういう方は多分ほかにも何人かいらっしゃると思いますけれども、直接大臣がお話を伺って、また激励をしていただければ、こういう方々はふえるんじゃないかと思っています。これは要望でお話を
させていただきます。

その上で、この協力雇用主の数は近年増加をしております。法務省の数字では、平成二十年には六千五百五十六社だったのが、昨年には九千九百五十三社までふえております。ただ、問題は、実際にこういう方々を雇用している会社の数は三百六十四社のみでございます。ですから、約一万の会社が登録はしているんですけれども、実際に雇用しているのは三百六十四社、そしてまた、雇用されている人の数も七百五十八人と低い水準にとどまっております。ですから、今後の課題は、雇用主に参加をする企業をふやすと同時に、実際の雇用率を上げていくということが非常に大事になるわけでございます。

そこで、大臣が先ほどの答弁の最後のところで触れました更生保護就労支援モデル事業、れは実は、私の地元の福岡で全国に先駆けて平成二十三年度から実施をされております。この事業についてのこれまでの評価と、それから今後どういうふうに実施をしていくのか、その方針について伺いたいと思っております。

○谷垣国務大臣
今、遠山委員から野口さんのお話、いろいろ御苦労も伺いまして、今おっしゃらなかったもっともっといろいろな御苦労がおありだろうと思うんです。本当にありがたいなと思い
ます。ありがたいという意味は、感謝する、サンキュー・ベリー・マッチという意味でありがたいだけではなしに、本当になかなかそういう方が存在するのが、よく存在しておられるなという意味でもありがたいことだなと言葉の原義にまでさかのぼってお礼を申し上げたいと思っている次第です。

ですから、私もできるだけ機会を見つけてこういう協力雇用主の方とお会いをし、どうしたらその御苦労に報いられるかというようなこともいろいろ考えていかなきゃならないと思います。

その上で、今おっしゃいました、そういった方を支援していく意味合いも含めまして、更生保護就労支援モデル事業というのを民間法人に委託して、矯正施設在所中から就職後の職場定着に至るまで、継続してきめ細かにやっていこうということですが、先ほどまず福岡とおっしゃいました。平成二十四年度は全国六つの保護観察所で実施して、高い就職率定着率を示しておりまして、この事業の寄り添い型の支援、就労がなかなか難しい出所者等の就労確保、職場定着になかなか効果を上げているんじゃないかなと思っております。

平成二十五年度ではこの事業の効果検証を実施することとしておりまして、その検証結果を踏まえて今後の事業のあり方をさらに検討していきたい、このように思っております

○遠山委員
ありがとうございます。齊藤保護局長に伺いますが、今大臣が御説明いただいた更生保護就労支援モデル事業について、今民間法人に委託する形式をとっております。基本的にうまくいっている、成果を上げてきているという認識を私も持っておりますが、ちょっと現場からいろいろ声がありまして、そのうち一番大事な声というのは、この事業というのは単なる就労支援事業ではなくて、まさに更生支援、つまり立ち直り協力というものを兼ねている性質のものでありまして、さまざまな問題を抱えている支援対象者を実際に支援できるだけの能力とか経験とか知識、こういったものが求められると思うんですね。

ですから、今後、この事業、検証していくと大臣はおっしゃったわけでございますけれども、こういう今の形式のままいくのかどうかというそもそも論もございますし、また、今の形式の文脈で申し上げれば、受託をする民間法人はそういったやや特殊な配慮を行う能力、経験というものがあるのかどうか、そういうところをしっかり重視した形でやっていただかないと、いわゆる単なる人材派遣、人材紹介会社がこれを請け負っても、やはり前歴のある人たちを支援するわけですから、非常に通常は求められないような配慮とか手続があると思いますので、そういった観点でしっかりと検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○齊藤政府参考人
お答えいたします。先ほど大臣から御説明ありましたように、更生保護就労支援モデル事業、刑務所出所者等に対しまして継続的で非常にきめ細かい、また寄り添い型の就労支援ということであります。非常にいろいろな困難もございますし、それからまた非常に高い公共性も必要である、もちろんいろいろなノウハウも必要であるということでございます。

そういうことから、委員御指摘のとおり、本事業の性格上、本事業を受託する事業者につきましては、まず更生保護事業に対してきちっとした御理解を持っていただいているということを前提に、例えば、刑務所出所者等とか、それから高齢者、障害者、ニート、引きこもり、そういった方々に対する、比較的就労が難しいと思われる方々に対する就労支援に関するネットワークを持っておられる方であり、かつ、これまでそういう方々に対して就労支援をされた経験があるといった方がふさわしいというふうに私どもは思っております。以上でございます。

○遠山委員
ありがとうございます。続けて局長に伺いますけれども、私がお配りした資料の二枚目、資料の二を見ていただきたいと思います。

先ほどの同僚委員への答弁の中で局長も言及されていたかと思いますが、来年度予算案で初めて協力雇用主関係の予算が計上されたんですね。実は、大臣、初めてなんです。新規でこういう予算を計上したので私は評価しているんですが、協力雇用主雇用促進旅費とか職場定着協力者謝金等で予算計上されたんですが、まだこれは全国を的としていて千七百万円という少額の規模の予算でございます。

その上で、資料二をちょっと見ていただきたいんですが、これは、北九州市が来月、来年度から導入する仕組みで、報道されているわけでございます。要するに、元受刑者というか出所者や非行少年、少女を雇用すると、残念ながら、その雇用主に経済的損失が生まれる。先ほどもちょっと言及しましたが、レジのお金を盗んでどこかに消えちゃったというようなことが起こり得るわけです。そういうリスクがありながら、やっていただいているわけです。

実は、国の方は、この記事にも書いてありますけれども、出所者や保護観察中の少年を受け入れた協力雇用主に対して、受け入れた最初の一年間は、上限二百万円で被害が出た場合に見舞金を支給しております。ただ、一年間だけなんですね。だから、二年目にそういう事件が起こったら何も出ない。そこで、北九州市としては、少し支援対象者も広げまして、上限百万円の見舞金を二年目に被害が起こったら出しますよ、こういう制度なんです。

そこで、御答弁は局長で結構ですけれども、私の提案は、まさにこの北九州の問題意識というのは実は全国で普遍的な要素がございまして、ぜひ法務省としても、雇った後の一年間だけの見舞金支給ではなくて、二年とか、場合によっては三年とか、問題の実情を見きわめた上で、精査した上で、少し期間も広げて、支援対象も広げるような改善をする。北九州方式を参考にしながら、少し全国的な協力雇用主に対する支援の拡充を図っていくというようなことを検討していただけないかと思いますが、いかがでしょうか。

○齊藤政府参考人
お答えいたします。法務省におきまして、平成十八年度から、厚労省と連携いたしまして、刑務所出所者等総合的就労支援対策の一環として身元保証制度を導入しております。具体的には、身元保証業者が保証するのに必要な保証金を助成する事業に対して補助金を出しているということで、もう先生御案内のとおりだと思います。今後とも、この制度を活用して、協力雇用主の方々が不安なく雇用できるように努めてまいりたいと思います。

期間の関係につきましては、私ども、例えば、保護観察の期間中であるとか更生緊急保護の期間内であるといった一つのやはり縛りがございますので、そのあたりも含めまして、また今後の勉強の課題にさせていただきたいというふうに思っております。どうもありがとうございます。

○遠山委員
いずれにしましても、また大臣のリーダーシップで、この協力雇用主さん、先ほど取
り上げられていた保護司さんも、本当にできる限りの支援を法務省としてもしていただいて、その延長線上にやはりこの再犯防止というものの目標の達成というものがあると思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。