遠山清彦です。与党・民主党は、党内騒動を経て、先月末に消費税増税法案を閣議決定し、国会に提出しました。少子高齢化・人口減少時代を迎えた日本にとって、社会保障のための安定的な財源を確保するために消費税を活用するという考え方は、私たち公明党議員も持っています。国民のみなさんの中にも、「未来の世代に借金のツケをこれ以上回さないためにも、消費税増税は避けられない」という考えをお持ちの方が徐々に増えているという印象を持っています。

しかし、今回の野田政権の消費税増税法案には、あまりに欠陥、問題が多すぎて、とうてい、そのまま賛成できるものではありません。まず、3年前の政権交代時に、民主党は国民に「今後4年間は消費税を上げない」とわざわざ約束しました。しかし、たった2年でその約束を反故にしました。政権奪取前は、民主党幹部が毎日のようにテレビに出演し、「自公政権の無駄を16.8兆円節約し、それをマニフェスト政策の財源とするので、消費税増税なんかしなくてよい」と主張していました。ところが、この「変節」「裏切り」。国民に対する明確な謝罪と、「変節」した理由を丁寧に説明しなければ、理解を得られるわけがありません。

また、手続きに関する問題ですが、野田政権は消費税増税について、最初に国際会議で公言し、「国際公約」にした後で、国会、与党内調整を始めました。これは、常識的な順序とは全く逆の説明手法です。その結果、閣議決定する直前になって、与党内で反発が強まるという醜態をさらし、さらにその後も「余震」は続き、役職辞任・離党・分裂などが起きています。政府与党がバラバラに混乱し、まとまっていないことは明らかですから、「野党の皆さんもご協力を」と国会審議で呼びかけられても、本気で協力する意欲がわかないのは当然でしょう。

さらに肝心の法案の中身ですが、公明党の石井政調会長は、「消費税増税を仮に引き上げるとしても、5つの条件が満たされなければならない」とかねてから主張しています。その5条件とは、(1)社会保障改革の全体像を示す(2)景気回復・デフレ脱却の実現(3)行政改革、政府・国会が「身を切る改革」をすること(4)使途を社会保障に限定する(5)税制全体の一体的改革を実現すること。この5条件がほとんど満たされていない現状では、公明党は賛成できません。

特に、(1)社会保障改革の全体像を示す、という条件については、消費税増税による増収分を充てる年金制度の改革について、政府与党は法案を先送りしています。「国民年金、厚生年金、共済年金の一元化」と「月額7万円の最低保障返金(全額税財源)の導入」の2つを柱とする民主党の新年金制度は、その移行期間も、制度設計も、負担と給付の関係も、何もかも重要なことが霧の中で明確になっていません。今年の国会論戦で明らかになった一部の事実を考えても、この新年金制度は実現不可能であり、新聞各社の社説でも「撤回せよ」と言われるほど、ずさんな案です。そんな、実現するかどうかもわからない、中身がさっぱり分からない新年金制度のために、「先に増税してお金だけ出してもらいたい」と言われても、納得する国民がいる訳はないでしょう。

年金だけではありません。民主党は政権を取る前、後期高齢者医療制度、介護保険制度、障がい者福祉制度など、社会保障をすべて見直すと主張していましたが、ごく一部を除いてその改革は大幅に遅れています。そういう努力を怠って、突然、消費税増税だけ先行させるというのは、あまりに虫が良すぎます。

景気回復やデフレ脱却の実現、行政改革によるムダ削減なども国民の皆様の目から見れば、不十分極まりないでしょう。また、5条件には入っていませんが、「福祉社会ビジョン」などで公明党が従来から主張している「低所得者対策」が不明確なことも、大きな問題です。消費税は、所得が低い人ほど負担感が強い税ですから、この逆進性の緩和策をどうやって確実なものとしていくかが、消費増税では、重要なポイントになります。

民主党は、一部諸外国で導入されている「給付つき税額控除」を将来、導入すると言っていますが、共通番号制度もまだない中で、いったいいつ実現できるのか、これもまたも不明です。与党内の議論では、それまでの間の「つなぎ」として「簡素な給付措置」(財源4000億円?)をするとも言っていますが、その制度設計もまったく闇の中です。

消費税の使い道もさっぱりわからない、低所得者対策も良くわからない。わからないことばかりの中で、「5%税率を上げる」ことだけが明確な今回の消費税増税法案。これからの国会審議でこれらの問題点を徹底追及していきます。