遠山清彦です。昨日午後、予算委員会で今年初めての質疑に立ちました。野田内閣の新任5閣僚への集中審議でしたが、私はすでに失言等で物議を醸している田中防衛大臣と、社会保障と税の一体改革担当の岡田副総理の2人に絞って質問をしました。

田中防衛大臣の答弁は、予想以上にひどく、大変失礼ながら、質疑の中で同席していた野田総理に「(防衛大臣を)変えたほうがよい」と進言してしまいました。沖縄防衛局長の「講話」問題については、民主党政府の「政治主導」が名ばかりであることがはっきりしました。

私は、普天間移設問題について、沖縄県民が政府を信頼していない点や、鳩山元総理が主張していた「県外移設」が民主党の公約かどうか、問いただしたのですが、田中大臣は、的外れな答弁に終始しました。特に、後者の問題について、田中大臣は、堂々と「『県外移設』は公約です」と答えましたが、実は、鳩山内閣の外務防衛閣僚は繰り返し「公約ではない」と明言していたのです。(公約でないという立場だからこそ、その後辺野古案に戻ったわけです。)

まさに、あきれるような閣内不一致を露呈していましたが、さらに驚いたのは委員会に同席した総理をはじめとする他の閣僚が、田中大臣を誰もフォローしようとしなかったことです。口にこそ出しませんが、「こりゃ、だめだ」という表情を皆がしているわけですから、「最強の布陣」内閣などと、もう恥ずかしくて言えなくなっているのだと思います。

さらに、私が昨年の予算委員会で取り上げた「米軍基地が沖縄にもたらす経済効果・雇用効果」について、田中大臣の見解を聞きましたが、この答弁は完ぺきな間違い。大臣は、これまた堂々と「米軍基地の雇用効果は大きい」と答えましたが、これは統計資料上全く逆で、例えば、沖縄県中部の北谷桑江地区では、米軍基地の時の雇用効果は20名なのに対し、返還後は5000名を超えており、雇用効果は250倍を超えているのです。不勉強・準備不足も甚だしい実態がよくわかりました。

最後になって、田中大臣への質疑で唯一評価できる点が出てきました。駐留軍用地跡地利用法制で、公明党・自民党の主張を受け入れた点ですが、それ以外の答弁は完全な落第点であり、今後改善が見られない場合には、さらに厳しい対応をせざるを得ないと思います。

一方、岡田副総理との質疑は、残り時間が少なく、1往復半のやりとりでしたが、大変有意義でした。政府与党が最近発表した社会保障・税一体改革の「素案」を念頭に、多数の質問を用意していましたが、1問だけ聞きました。

民主党は野党時代に現行の年金制度をこっぴどく批判し、『100年安心ではない』とか『破たんしている』と言ったが、今回の素案ではその現行制度の改善点ばかりを挙げており、野党時代の評価を変えたのではないか?今回の素案で、現行制度の改善を正当化するための論理を出しているが、これは2009年衆院選時の民主党マニフェストに全く記載がないのは問題ではないか?というものです。

これに対し、岡田副総理は、「今でも現行制度には問題点がある」として、次の3点を指摘しました。(1)現行の年金制度への国民の信頼が揺らいでいる。(2)現行の年金制度が今の日本人のライフスタイルに合っていない。(3)国民年金が未納問題等で破たんの危機にある。ただし、野党時代に激しく批判していた「マクロ経済スライド」導入(これは、坂口厚労大臣時代に導入した年金改革の柱の一つ)については、「もっと高く評価すべきだった」と反省の弁を述べました。

さらに、私が驚いたのは、岡田副総理が次のような趣旨の発言をしたことです。「現行制度を改善した年金制度と、民主党がこれから提示する新たな年金制度(最低保障年金と一元化された所得比例年金制度)を比較して、どちらが国民にとってよいのか、冷静に与野党で議論したい」。今までは、「今の年金制度はだめだ、だから新しい制度に民主党が変える」という立場だったのですが、この答弁では、「今の年金制度の改善版と、新制度を比較してベターな方を選択する」に変わったことを明言したからです。

私は、最後にコメントしました。まず、岡田副総理が、「マクロ経済スライド」について、認識を変えたことを率直に表明したことを評価しました。こういう姿勢が以前はなかったからです。また、副総理が指摘した3点の問題点についても、私は「異論はない」と申しあげ、「だからこそ、公明党も現行制度の改善を提示(2010年12月発表の公明党「福祉社会ビジョン」)している」としました。

ただし、私が苦言を呈したのは、「民主党がこれから提示しようとしている新年金制度が、(公明党が目指す)現行制度を改善した年金制度より優れているという確証がない」という点です。今の政府与党の社会保障改革の最大の弱点が、実はここにあります。つまり、「2つを比べよう」と協議を呼びかけられても、肝心の民主党が思い描く「新年金制度」の詳細な制度設計や財源が一向にわからないからです。これでは比較のしようがないのです。

これは政府・与党が提出した「素案」を見るだけで、誰でもわかります。50ページある素案のうち、新年金制度の考え方が簡潔に記されているのは、たった半ページだけ。肝心なことは、ほとんど先送りされています。たとえば、<最低保障年金(税財源)>の場所には、このような記述があります。「すべての受給者が、所得比例年金と最低保障年金の合算で、概ね7万円以上の年金を受給できる制度」これを読むと、「所得比例年金の保険料を1円も払わなかった人も、最低保障年金7万円を毎月もらえるのか?」という疑問を誰でも持ちますが、それ以外の詳細は何も説明がありません。

もし、民主党がそういう最低保障年金制度を導入するならば、年金未納者が急増することは間違いありません。そして、年金=生活保護となってしまい、それを全部税金で手当てするとなると、莫大な財源が必要となって、消費税率は20%を超える可能性が出てきます。

ところがもし、「年金保険料未払い者には、最低保障年金は出さない」ということにすると、今度は民主党の新制度下でも無年金者は存在し続けることになります。民主党は「無年金者をなくす」と吹聴してきましたので、公約違反に陥ります。

つまり、この1点だけ見ても、民主党の改革案は、制度論として破たんすることが明らかなのです。

民主党の年金改革案には、他にも自営業者など現在国民年金に加入している方々の保険料がサラリーマンの倍額になるのではないか、など、多くの問題点が存在します。これらの問題点については、今後の質疑でさらに追及していきたいと思います。国民の皆様の前で、しっかりとした具体的でわかりやすい政策論争を展開することが、国会議員の最大の使命のひとつだと思っています。