遠山清彦です。昨夜、野田総理が、「TPP交渉参加に向けて、関係国との協議に入る」との会見を行いました。民主党内の反対勢力に配慮して曖昧な表現になっていますが、事実上の交渉参加表明と言って良いと思います。

私個人としても、公明党としても、今の状況下でのTPP交渉への参加には反対です。TPPに関する公明党のプロジェクトチームは、一昨日に、これまでの党内議論を踏まえた「中間とりまとめ」という文書を発表しています。以下、一部、引用しながら私なりの解説をしたいと思います。

「日本は、アジア太平洋地域内の二国間EPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)をはじめ、アジア太平洋地域における21世紀型の貿易・投資の自由化、円滑化に向けて主導的に取り組むべきである。最終的には、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構築を目指して引き続き努力していくべきである。」

貿易立国として経済大国を実現した日本として、日本の国益を守った上での自由貿易促進の方向性を公明党は認めています。しかし、現状のTPP交渉参加には、重大な問題があります。

「今回のTPP交渉参加については、政府部内で十分な検討もなされないまま、菅前総理の突然の’思いつき’からはじまった。野田総理も「しっかり議論をする」と言いながら、必要な情報を提供することもなく、十分な議論ができる環境ではない。TPPは、農業をははじめ、健康、文化、環境政策など様々な分野にわたって多大な影響を及ぼすことが想定される。政府には、TPP参加により国民生活がどう変わるのか、そのメリットやデメリットは何かなどを国民に明確に説明する責任があるが、全く果たされていない。」

ここに問題の本質があります。TPPは24分野にわたり貿易の自由化とそれに伴う関税の撤廃や規制緩和を取りまとめる多国間の経済連携であり、国民生活や日本の産業構造に与える影響は非常に大きいと思います。しかし、これまでの国会論戦でも、その全貌は全くわからないままです。政府は、なぜ日本にとってのメリット・デメリットの一覧表をきちんと作って国民に提示をしないのか、私は強い疑念を持っています。

TPP推進派の有識者は、「日本は今、中国や韓国に国際競争力で負けている。TPPに参加することで反転攻勢にでるべきだ」という趣旨のことをよく言いますが、その肝心の中国も韓国もTPPには、参加していません。さらに、すでに報道されているように、9カ国のTPP参加国の貿易量の9割以上が日米の2国で占めるわけで、結局TPPの本質は日米FTA(自由貿易協定)ではないか、という素朴な疑問があります。

中国や韓国と競争するならば、TPPだけでなく、例えば「日中韓FTA」や「ASEAN+日中韓FTA」などのアジア地域を中心とした自由貿易圏の構築を先に模索することも選択肢としてあるのではないか、と思います。実際、今月はじめに私が超党派訪問団の一員として韓国国会議員や政府要人と意見交換した際は、韓国側から「日中韓FTAをやりたい」との意見表明がありました。

野田政権は、TPP参加と同時に、日本の農業支援も強化する方針のようですが、TPP参加によって日本の農業が今以上に弱体化することが本当であれば、これは長期的に由々しき問題となります。日本の人口は今後減少することは間違いないですが、世界の人口はアフリカやアジアを中心に急増し、今世紀末には100億人を超えると指摘されています。そういう時代になると、食糧確保が国の命運を大きく左右するわけで、食糧自給力の維持が非常に重要になります。野田内閣は、こういった問題に対しても説得力のある説明をしていません。

「拙速」とは、「早いだけでヘタ」という意味です。まさに今回の交渉参加表明は、拙速な決断であり、反対せざるを得ません。もちろん、日本国憲法上、外交は行政府である内閣の専権事項でもあるので、交渉参加を野田総理が決めることはできます。しかし、TPPが条約として成立した場合の批准は国会(衆議院)の承認が絶対に必要となりますので、これで全てが終わったわけではありません。今後とも、国会論戦において、政府の不十分な情報提供や説明不足を追及して行きます。