遠山清彦です。6月22日の国会会期延長決定後、国会はやや空転気味でしたが、ようやく昨日衆院予算委員会の集中審議が始まり、動き始めました。この空転の間にも松本復興大臣の辞任などがあり、もはや菅内閣が末期症状を示していることが明らかになっています。

しかし、総理は全く退陣する気配がありません。実際、昨日の委員会審議でも「私は辞めるとか退陣するとか、一回も言っていない」と発言し、皆ひっくりかえっていました。内閣不信任案も否決され、国会としては打つ手がない状況ですが、とにかく復興支援を最優先に活動していこうと決意しています。

さて、そんな中、公明党内では様々なプロジェクトが進行しています。その一つが自殺防止対策で私もプロジェクトチーム事務局長として参加しています。一昨日、その会合を開催し、内閣府の自殺対策部局からヒアリングしたのですが、その折に提出された『自殺対策白書』の中に感動的なエピソードを見つけました。

以下、一部をそのまま引用しますが、これは自殺防止に取り組む和歌山県のNPO白浜レスキューネットワークの活動を紹介した記事からです。

三段階で保護され、人生をやり直して精一杯生きた男性の例を紹介します。その男性は、三日間、トイレの水だけを飲んで死ぬことを考え、絶壁に座り続け、日焼けで唇がパンパンに腫れ上がり、体中が真っ赤に火傷している状態でした。死に切れず、しかし衰弱して動けず、失意の内にただ座り続けていました。

 四日目の夜、観光客らしい数人の若い女の子の一人が、通り過ぎた後、戻ってきて彼の前に立ち「馬鹿なこと考えたらあかんよ。死んだらあかんよ」と言って2000円を手渡してくれたそうです。彼は、翌朝、そのお金でご飯を食べ、我々(NPO)のところに電話をしてきました。保護された後、9ヶ月で自立し、ホテルの警備員や掃除の仕事を続けて自立した生活を送りました。

脳梗塞で倒れ3年間の長期療養生活を送りましたが、その間も精一杯行きました。平成21年7月に癌が見つかり余命2週間と宣告されましたが、それからも10月までがんばりました。その数ヶ月、毎日のように二人で話していたのは、「この10年よくがんばってこれた。生きてきてよかった」そして「10年前声をかけてくれた女性に感謝やなあ。」というものでした。

死の縁で苦しんでいた彼に、声をかけできるだけの助けの手を差し伸べてくれた女性は、男性がその後送ったこの10年の歩みを知りません。しかし、この男性の人生を変えたのは、たった一度声をかけ、できる限りの助けを差し出したこの女性だったことは誰も否めないと思います。

このエピソードを読み、私は本当に心を打たれました。きっとこの男性は、自殺をする理由が山ほどあって絶壁に座っていたのでしょう。その人にその後10年間生きる決意と勇気を与えたのは、通りがかりの若い女性のたった一言の激励と2千円だったのです。

「一言と2千円」は、誰でもできそうなことですが、無縁社会とも呼ばれてしまう今の日本社会ではなかなか難しくなっているのではないか、と感じます。この若い女性も「自分の知り合いではないし、怖いから近づかないでおこう」と思って、何もせずにこの男性の前を過ぎ去ることができたし、それでもその行動を批判する人は誰もいないのが世間の常識でしょう。

しかし、彼女は素通りできずに戻ってきた。そして、恐らく大金が入っているわけでもない自分の財布から2千円を取り出して、その男性に渡したのだと思います。男性は、その2千円で食事をして、NPOに連絡を取り保護されたわけですが、落ち着けば、また自殺の理由がどんどん湧き上がってきたはずです。それでも、その男性の心が揺らぐことなく、10年間がんばって生き抜いたのは、あの戻ってきた若い女性の真心を裏切りたくなかったからだと、私は感じました。

私もそうですが、ものすごいスピードで人もモノも情報も動く現代社会で忙しく暮らしていると、こういう真心の一言と行動をわすれがちになります。しかし、その真心から発した言葉が、人の心を動かし、死のうとしていた人の命を救うのだ、ということをこのエピソードから改めて教えられました。

日本は、先進諸国の中で、最も自殺者の多い国になっています。今政府を挙げて自殺防止に取り組んでいます。自殺の原因としては、経済問題、健康問題、家族問題、職場の人間関係、などがしばしば挙げられますが、私はこのエピソードを知り、それだけではないような気持ちが強くなりました。あえて誤解を恐れずに言えば、真心の一言や行動が少ない社会になってしまったからなのではないか、そう思ったのです。

自殺者数の統計データをみると、日本では奇妙なことに有名人が自殺するとその直後から自殺する人が急増する傾向があります。一部の専門家からは、マスコミの過剰な自殺報道が後追い自殺を誘発している、との指摘もあります。(実際、WHOは自殺報道に関するガイドラインを策定公表しています。)

私がマスコミにお願いしたいのは、有名人の自殺の背景をセンセーショナルに報道するよりも、白浜の若い女性の「一言と2千円」、そしてそれに救われた男性のようなエピソードをもっと報道してもらいたい、ということです。

今年は5月に自殺者が急増しており、深い懸念を持っています。私も、自身の姿勢をまず改めながら、国会議員としてできる限りの対策を推進していくことを誓いました。