遠山清彦です。連日の報道で民主党政権が新たな試みを各分野で行っていることが伝えられています。まだ全容が明らかでないものや、思いつきで閣僚が発言したようなこともあるので、評価しにくい面もありますが、「立法府の役割」に関わる民主党の改革はどうもおかしな方向に行っている気がしてきました。

まず、国会での官僚答弁禁止という方針。「政治主導」への一環ということはわかるのですが、国会の委員会審議等で全く官僚の答弁を禁止するということは、国民の立場からすると実は不利益が多いと感じています。なぜなら、官僚からの補足説明や情報公開が不十分になり、かえって国会論戦が抽象的・あいまいになる可能性があるからです。

確かに、国民の代表として選挙で選ばれている政治家が大臣・副大臣として全ての質問に答えることが原則だと思いますが、国会質疑はかなり専門的であり正確な統計データを求められることもしばしばです。どんなに優秀な大臣がいたとしても、毎日の国会質疑で与野党議員から繰り出される何百という質問に全て正確に答弁することは不可能です。

私は、「政治家が判断すべきことは、政治家が答える」問題と「事務的・技術的に専門家である官僚が答えてもいい」問題に分けて審議をすれば、決して政治主導は崩れないし、逆に役所の情報公開を国会の場でできるというメリットがあるのではないか、と考えます。(すでに、民主党の閣僚の一部からも同様な意見が出ているようですが。)

次に、11日に平野官房長官が「与党議員はあまり質問する必要はない。答弁が大変だから」と発言したことが新聞で報じられていますが、これには私は呆れてしまいました。政治家として、かなりレベルの低い発言です。

私は、過去7年間与党議員を経験しましたが、小泉内閣の政務官時代や法務委員長時代を除けば、年間50回前後、国会質疑に立たせていただきました。質問数は2000を軽く超えていますし、質問した分野も外交・防衛・社会保障・福祉・雇用・決算・予算・国会改革等々、多岐にわたります。

当選した直後は、良質な質問を作るために秘書達と徹夜作業したこともありましたが、とにかく国会質問作りは本当に勉強になりました。この経験がなかったら、今日の私の政策に関する知識は半分以下だと思います。

また、与党議員といえども、政府内にいなければ、なかなか政策実現ができません。そこで、私などは国会質疑を通して政策実現する挑戦を何度もしており、実際にそれが成功した例も多かったのです。(例えば、NGO大使の創設、内閣官房の難民問題対応策強化、若年者雇用対策の拡充、会計検査院におけるODA予算の無駄使い調査の指示実現、等)

このように国会質疑は与党の若手議員にとっては、「政策実現の手段」であり、立法府の一員としての議員の資質を磨くための大切な仕事です。その仕事を、鳩山政権幹部が奪い取るかのような方針を示し、しかもその理由が自分たち閣僚の「答弁が大変だから」とは、あいた口がふさがりません。もし鳩山政権がこの方針を貫くなら、民主党新人議員143人の成長率は極めて悪くなることでしょう。

最後に、議員の成長を阻害するもう一つのことを民主党幹部はやるかもしれません。すなわち(与党議員による)議員立法の禁止です。確かに政権与党になれば実現したい政策は行政府である内閣が閣議決定の上、法案として国会に提出できます。(専門用語で「閣法」(かくほう)と言います。)

しかし、憲法41条は、「国会は国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」と定めており、与党だろうが野党だろうが全ての国会議員は憲法によって立法権を与えられています。

そしてその権利の行使が「議員立法」という手法であり、与党時代の公明党・自民党議員も、野党時代の民主党議員も、この権利に基づいて様々な議員立法による法案を国会に提出し、ある程度の割合で成立させています。最近では、臓器移植に関する改正案は与野党を超えた議員立法でした。(一般的に議員立法は少数派や社会的弱者を守る立法を行うのに、きわめて有効と解釈されています。)

これを民主党は、禁止するというのです。もし本当にこれを徹底するならば、私は憲法に抵触する恐れもあると考えます。

民主党議員のみなさんにうかがいたい、「本当にこんな暴挙を許すために国民は政権交代させたのか」と。