遠山清彦です。今の政権与党が頻繁に使う「政治主導」という言葉について言及しておきたいと思います。政治主導とは、一般的には「国民から選挙で代表者として選ばれた国会議員=政治が、選挙の洗礼を受けず試験で行政府の中に入った官僚をリードして政策を決断・実行する」という意味と思われます。

これに、私自身異論はありません。しかし、注意しなければならないことは、「政治家が決めること」=「常に100%正しい」とは限らない、という点です。民主党政権の一部が、もしこの点を忘れているのであれば、とんでもない過ちを犯す原因になると私は考えます。もちろん、官僚が決めたことが100%正しいとも言うつもりはありません。政治家も人間であり個人の資質や経験にはおのずと限界があるわけです。

選挙で国民の信託を得た政治家が決断をする権利をもつことは事実です。しかし、国政与党の決断は非常に重く、国民生活に甚大な影響があるわけです。官僚のみならず、民間の有識者や団体、NPOや個人の意見もしっかりと参考にしながら、「よりベターな」決断・選択をすることが求められていることを与党議員、特に閣僚には是非自覚をしてもらいたいと思います。

先日、私は民主党が与党議員に議員立法を原則禁止する方針を打ち出したことを強く批判しましたが、10月25日付読売新聞4面で伊藤俊行氏(読売新聞政治部)が興味深い指摘をしていました。

伊藤氏は、鳩山政権が議員立法を原則禁止したのは英国を参考にしたと推察した上で、鳩山政権は、日本と英国の議会事情の違いを理解していないのではないか、と指摘しています。英国議会においては、確かに議員立法は制限されており、事実少ないのですが、その背景には英国議会が政党本位の選挙になっていて個々の議員が頻繁に選挙区を変える「旅人」であることが説明されています。

この点、日本の議員は与野党を問わず「国替え」をする人はほとんどおらず、それぞれの選挙区の有権者は選んだ議員を「育てよう」という意識を持っています。ところが、その育ってほしい議員が唯一の立法府である国会に行って、与党だから国会質問もしない、議員立法も禁止ということになれば、これでは議員として育ちようがない、という問題が起こるわけです。

私も同感で、民主党がやろうとしていることは、浅はかな「モノマネ」に過ぎず、かえって政治不信を深めるように思います。

私は英国に6年余り住んでいましたが、英国は慣習法の国であり、憲法ですら文章として存在しない国です。議会のルールも何百年もかけて慣習的に形成してきた国であり、「同じ島国だから、議会制民主主義の母国だから」と安易に表面的・形式的な模倣に走ることは慎むべきだと、私は考えています。