遠山清彦です。鳩山内閣で国土交通大臣に就任した前原氏は、総選挙前に高速道路無料化を明確に反対していた人物で、私は今後の彼の言動に注目しています。

以前私のメルマガでも紹介したように、前原大臣の反対の主な理由を要約すると、次の3点でした。

(1)過去に建設した高速道路の債務約31兆円を利用者の料金収入から返済するのではなく、国民全体の税金で返済することは「受益者負担の原則」に反する。

(2)高速道路が完全無料化されるとJRやフェリー会社などの経営に悪影響を与える。

(3)高速道路無料化は二酸化炭素排出量を削減する環境対策に逆行する。

私の立場はこの時点での前原大臣とほぼ同じですが、少し補足します。民主党の中堅議員の中には、(1)で言及した「受益者負担の原則」は「もう崩壊している」と発言しています。その理由は「自公政権が実施したETC割引、休日1000円制度がすでに受益者負担原則を無視している」というものらしいです。

しかし、これは正確ではありません。確かに自公政権が実施した高速道割引制度も、鉄道や海運業界に悪影響を与えました。しかし、自公の政策は不況下での「緊急対策」であり、2年間の時限措置です。それに対し、民主党の無料化政策は恒久政策であり、恒久的に他の公共交通機関に打撃を与えるという意味で、全く次元が異なります。

また、9月13日付読売新聞(ネット版)で指摘されているように、民主党の高速道無料化により国民一人当たりの税負担は、年間1万円を超えます。

これに対し、現在の有料道路に対する1世帯の平均負担は、8923円です。家族4人の世帯を考えると、現在は世帯全体で1万円以下の負担で有料道を維持していますが、民主党の政策が実現すると年間4万円以上の負担を背負うことになり、大幅な負担増になることは避けられません。

さらに私が問題だと思うのは、九州や沖縄をはじめ、全国の離島に住む国民のみなさんもこの高額な負担を強いられるということです。周知の通り、離島には高速道路は1mも走っておらず、島から出ない人は高速道路を使う可能性はゼロです。

そういう立場の人からも毎年1万円以上の負担をさせるという不条理な負担増を、いくら民主党が圧勝したからといって、実施することは許されるのでしょうか。私は、絶対に許せないと思います。

多くの国民がこの私の懸念を共有していると感じています。9月8日の報道では、産経新聞とフジテレビの合同調査で、国民の68.1%が高速道路無料化に「反対」と答えています。圧勝した政党の看板政策が、選挙後にこれほど反対されているのも、異例ではないでしょうか。

一部の報道で、国土交通省が高速道路無料化実施による経済効果が2.7兆円だった試算を隠ぺいしていたことが明らかになりました。この報道に接し、私も官僚の隠ぺい体質そのものは厳しく批判すべきだと思いました。私たち当時与党の議員にさえ、教えていなかったわけですから、官僚の傲慢さに怒りを禁じえません。

しかし、この2.7兆円の経済効果は、信頼できない試算と言わざるを得ません。この試算には、高速道路無料化によって鉄道会社、高速バス会社、フェリー会社等が被る損害が算入されていません。

さらに、高速道路無料化により33%増加すると指摘されている二酸化炭素排出量の環境に対する悪影響も数値化され算入されていません。

鳩山総理は、90年比25%の二酸化炭素排出量削減目標を掲げ、欧州諸国から絶賛されていますが、この目標の実現の最大の障害の一つになりうるのが、皮肉にも民主党の高速道路無料化政策であるということを、理解しているのでしょうか。この自己矛盾は、必ず国会審議の場で追及されることになります。

前原大臣には、是非選挙前に公然と反対していた立場を忘れることなく、日本の環境を守るためのモーダルシフト実現と高速道路を使えない国民に年間1万円超の負担を迫ることがないよう、強く訴えていきたいと思います。