議員年金廃止に伴う清算の概要
議員年金廃止に伴う清算の概要

 自民、公明の与党が提出した国会議員互助年金廃止法が2月3日成立した。これによって、「特権的」との批判が強かった国会議員年金は、同廃止法施行の4月1日に廃止される。廃止のポイントをまとめた。

現行制度は4月から廃止
「現職」の2/3は即時廃止
清算期間経て受給者ゼロに

 廃止法が成立したことで、現行の国会議員年金制度は、同法が施行される4月1日に廃止され、国会議員が加入する公的年金は国民年金のみとなる。ただし、すでに年金受給資格を得ている現職議員や、現に年金を受給している議員ОBもいることから、制度廃止に伴う清算措置がとられる。

 現職議員のうち、法施行日前日の3月31日時点(=以下同じ)で在職10年未満で年金受給資格のない議員には、現行制度と同様に退職時にそれまで納付した掛け金総額の80%を一括して返還する。これに該当する議員は衆院309人、参院137人、合わせて446人で、現職議員721人中の約3分の2は議員年金が即時に廃止される。

 現職議員のうち、在職が10年以上ですでに年金の受給資格を持っている議員275人(衆院170人 参院105人)は、(1)10年未満の議員と同様に退職時に納付総額の80%を受け取る(2)現行制度で定められた金額から15%減額した年金を受け取る――のいずれかを選択する。

 年金受給資格を得てすでに退職している議員ОB525人については、退職の時点によって現行制度から支給額を最大10%削減する。さらに、高額所得者に対する支給停止措置を強化、ほかの収入も加えた合計所得が700万円を超えた額の2分の1相当額を支給停止し、停止額が年金額を超えた場合には年金すべてを支給しない。なお、議員ОBの遺族に対する給付は2分の1が現行同様に支給される。

 この清算措置によって、一時的に給付者が増える時期も予想されるが、その後減少に転じ、最終的に受給者はゼロになる。不確定な要素が多く推計は難しいが、3月末時点で在職10年以上の議員が69歳から支給を受け平均余命の間受給すると仮定すると、受給者数は20年後には200人を割り込み、45年後にはゼロになるとの試算がある。いずれにしても、最終的には年金受給者も国庫負担もゼロになる。

新たな受給権は発生せず
年金受給権の取り消しは財産権を侵害する恐れ

 この廃止法成立で最大のポイントは、今後「新たな年金受給権は発生しない」ことだ。

 すでに受給権を得ている議員や、現に年金を受給している議員ОBに対する支給が継続されることで「廃止ではない」「事実上の存続案」だとする議論や一部マスコミ報道もあるが、感情論としてはともかく、現に法的な権利として年金受給権を持っている人が存在することを前提にした議論が必要になる。

 年金を受け取る権利は、すでに受け取ることができることが確定していれば、財産権として法的に保障される。その年金受給権を取り消すことは、憲法第29条で保障された財産権を侵害する恐れがある。今回、すでに受給権が確定している現職や現に受給している議員ОBへの支給額の減額幅も、ぎりぎりの削減幅とした。

 支給額を大幅減額したり、支給を取りやめれば、「憲法違反」との訴訟を起こされ国が敗訴する可能性も十分ある。法治国家として、財産権の問題を避けて年金改廃の議論をすることはできない。これを考慮しないで今回の廃止法を批判するのは無責任と言わざるを得ない。

 廃止法成立によって、新たな年金受給権は発生しないので、その意味でも年金は「存続」ではなく、「廃止」と言える。

年金の減額にも憲法第29条による一定の制限

 法的に確定している年金受給額を事後の法律で削減することについては、2001年2月に出された質問主意書に対する政府答弁書が、財産権との関係から削減の幅は一定の制限がある、としている。この質問主意書は農業者年金の支給額を約9.8%減額することについて政府の見解を尋ねたものだ。

 答弁書は、1978年7月12日最高裁大法廷での財産権に関する判決を引用。同判決は、憲法第29条第2項で「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める」とあることから、「法律でいったん定められた財産権の内容を事後の法律で変更しても、それが公共の福祉に適合する」ものであれば違憲ではない、としている。その上で同判決はその基準を「財産権の性質」「変更する程度」「変更することによって保護される公益の性質」などを総合的に勘案し、変更が「合理的な制約として容認されるべきものであるかどうかによって、判断されるべきである」としている。

公明、一貫して「現行制度廃止・抜本改革」を主張

 国会議員年金について公明党は04年2月、党内に「議員年金・秘書問題ワーキングチーム(WT)」を設け、抜本改革に向けて具体的な検討を開始した。同5月14日には冬柴鉄三幹事長が「基本的に廃止して、抜本改革する」との基本方針を確認。その後、同年6月に衆参両院議長の下に調査会が設置され、国会での本格的な議論が始まった。

 同6月15日には、遠山清彦・党青年局長が河野衆院議長、倉田寛之参院議長(当時)に会い、現行の国会議員年金制度を廃止し、抜本改革を求める要望書を、272万余の署名簿とともに手渡した。

 その後も調査会の答申に対し党WTは、さらなる給付額の削減を求めるとともに、第二段階で他の公的年金と統合して廃止するという具体案も示すなど、現行議員年金の廃止に向けた議論をリードし、加速させてきた。

 今回の廃止法成立も、昨年(2005年)9月22日、小泉純一郎首相と神崎武法代表の党首会談の席上、「議員年金廃止」で一致したことから、大きな流れとなった。

 一方、民主党は現に給付を受けている議員ОBに対して「3割カット」することで「実質的な廃止案」と主張したが、これは財産権侵害の恐れが強く、かつ支給が継続される点では与党案と変わるところがない。また、廃止法成立が近づくと党内から不協和音が噴き出し「生活も大事」などとの本音が飛び出し、採決に当たって「与党案に反対したら年金受給を選択できない」などとして「造反」する議員も出るなど、相変わらずバラバラぶりを見せた。

公明新聞:2006年2月22日付