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ヤングハローワークの利用状況を視察する公明党厚生労働部会のメンバーら(2002年2月7日 東京・渋谷区内)

 公明党がマニフェストに掲げた若年層の失業対策が進んでいる。2003年4月、厚生労働、文部科学、経済産業、経済財政政策担当の関係4閣僚による「若者自立・挑戦戦略会議」が発足し、6月には「若者自立・挑戦プラン」が策定され、今年度からスタートしているが、9月10日に「若者自立・挑戦プランの強化の具体化」(案)に基づく概算要求を決めた。今回は、若年失業・無業者が抱える問題点や、発表された主な強化策についてまとめた。

増加傾向の若年失業者
放置すれば将来に多大な影響

  2003年平均のフリーター数が217万人に達し、04年7月の完全失業率も若年層が他に比べて突出している。特に、15歳から24歳層は9.4%と全体の約1割にもなる。また離職率は中学卒で7割、高校卒で5割、大学卒も3割といわれ、定職につけない若者像が浮き彫りとなっている。
 若年層の失業者増加の背景には、企業が人件費削減のため新卒者の採用を控えているほか、若年層の職業意識の希薄化も指摘されている。こうした傾向が続くと、職業能力が高まらないために将来の日本の経済成長を制約したり、未婚化や少子化を深刻化させるほか、社会保障の担い手が減少することになる。
 03年4月に発足した「若者自立・挑戦戦略会議」は、坂口力厚生労働相(公明党・当時)の私案を基に、「若者自立・挑戦プラン」を策定。3年間で若年失業者・フリーターの増大を転換することを目標に、(1)教育段階から職場定着にいたるキャリア形成および就職支援(2)若年労働市場の整備(3)若年者の能力の向上、就業選択肢の拡大(4)若者が挑戦し、活躍できる新たな市場・就業機会の創出――に取り組むことを決定。04年度から取り組みがスタートした。

「若者自立・挑戦プラン」拡大へ
 「若者自立・挑戦プラン」では、若年者に対する職業情報や就職支援サービスを行う「ジョブカフェ」の設置や、「働きながら学ぶ」ことで若者を一人前の職業人に育てる「日本版デュアルシステム」の導入、インターンシップ(就業体験)の推進、フリーターを対象に専修学校で高度な知識の習得を支援する「フリーター再教育プラン」など、幅広い取り組みが行われている。
 こうした対策をさらに強化するため、同戦略会議は9月10日、新たに取り組む施策の具体案を発表した。それによると強化策は、(1)学校段階からのキャリア教育の強化(2)フリーター・無業者に対する働く意欲の喚起・向上(3)成長分野を支える人材育成の推進(4)企業内人材投資の促進(5)草の根eラーニング・システムの導入(6)国民運動の展開――の6つの柱からなり、来年度予算の概算要求額は351億円。これまでの取り組みと合わせ、同プラン全体の概算要求額は昨年から284億円増の810億円となっている。

学校段階からのキャリア教育強化
 小中高の学校段階において職業意識を形成するため、中学校を中心に5日間以上連続した職場体験などを行う「キャリア教育実践プロジェクト」をスタートさせる。また、ハローワークが企業と連携し、職場経験や見学を行う「職業意識形成支援事業」の対象校を拡大。さらにNPОや企業などの民間の経験やアイデアを活用したものづくり体験などの早期職業教育を推進する。
 このほか、先端技術や伝統技能の習得など、特色ある取り組みを行う専門高校への支援を行い、専門的職業人の育成推進も図る。

無業者等に対する働く意欲の喚起
  喫緊の課題として重視され始めた若年無業者、いわゆる「ニート」【別項参照】対策として、今回新たに「若者自立塾(仮称)」創出推進事業が盛り込まれた。社会生活の前提となる生活習慣や就労意欲が欠如している若者のため、合宿形式による集団生活の中で生活訓練、労働体験などを行うことで、社会人として必要な基本的能力の獲得、勤労観を養う。親の意識改革のための勉強会や、卒塾者に対するフォローなども行う。塾の設置・運営は民間から募り、全国で40カ所程度選定する。
 また、ボランティア活動など無償の労働体験や学習歴などの実績を記録する「ジョブパスポート」を作成し、企業の採用に反映される体制をめざす。05年度は10都道府県の10万人をメドとし、3年計画で全国普及する。
 このほか、職場の定着率を高めるため、若年従業員の相互交流や企業人事担当者を対象とした講習を行うとともに、インターネットを利用した相談体制も整備する。
 さらに、ものづくり立国をめざし、民間委託による無料の若年者向け実践的職業訓練の枠を拡大。また、子どもから大人まで、ものづくりに親しむ社会を形成するため、工場や職業訓練施設の開放を促進、ものづくり技能競技大会なども開く。

成長分野を支える人材育成の推進
  ものづくりのベテランのノウハウを若年層に受け継いでいくため、産業界と大学が一体で取り組む拠点を全国30カ所程度に整備。大学付属の「ものづくりセンター」などで、教材やカリキュラムの開発や数カ月の長期現場実習などを行う。
 ITや技術経営などの専門分野における人材育成のため、カリキュラムや教材の開発を行う大学などを支援するとともに、利用促進のための情報提供を行う。さらに職業能力開発総合大学校において、高度な実践技術と経営資質を養う訓練コースを開発し、総合的なものづくりの人材を育成する。

経費助成など企業内人材育成を推進
 「日本版デュアルシステム」をさらに強化するため、キャリア形成促進助成金を活用して、事業主に対する訓練経費支給を図る。
 また、経産省、厚労省、文科省が共同で要求している新規の「人材投資促進税制」は、競争力強化を図る目的の人材育成費用について、税額控除するというもの。企業の人材投資リスクを軽減し、長期的効果を見すえて人材投資を行うことで、産業界全体の国際競争力のアップにつなげるとしている。

誰でもいつでも能力向上の機会提供
 ジョブカフェや大学、商工会議所などを活用して「草の根eラーニング」サービスを整備。就職や仕事に役立つ知識や、職業的技能を手軽に学べる機会を提供する。
 最近、企業などで活用されている「eラーニング」は、パソコンやインターネットなどを利用した教育を指し、遠隔地でも同質の教育内容を提供できることや、コンピュータならではの教材を活用できるといった利点がある。

国民各層が一体で取り組む運動推進
 人材育成の必要性を広くアピールする「若者フォーラム(仮称)」を開催。若者向けウェブサイトの構築や「若者チャレンジキャラバン(仮称)」などのシンポジウムも実施する。
 また、女性進出が遅れている理工系分野に関する情報提供・意識啓発を行うキャンペーンの開催、地域女性センターにおいて雇用や起業、NPO、農林水産関連などタイプ別の就業支援・意識啓発セミナーなどを実施する。

10月から拡大 若者トライアル雇用事業
終了者の79%が常用雇用へ移行

  「若年者トライアル雇用事業」が、10月1日から拡充された。これまで30歳未満までしか利用できなかったが、公明党の強い働きかけで35歳未満までに拡大。これにより、現在30万人から80万人ともいわれる30歳代前半のフリーター層も利用可能となった。
 同事業は01年12月スタート。若年失業率の改善と職場定着をめざし、30歳未満の求職者を3カ月間試行的に雇用する企業に「試行雇用奨励金」として1人当たり月額5万円を支給。企業にとっては初期研修の費用負担の軽減と業務遂行能力の見極めができ、若年者にとっても企業の求める能力や技術を実感できるというメリットがある。
 2004年6月までに8万6488人が利用。その終了者6万3102人のうちの79.1%にあたる4万9896人が常用雇用に移行するなど、高い政策効果をあげている。同事業の拡大については、公明党の遠山清彦参院議員(青年局長)が「労働市場では30歳以上が応募できる仕事は実際多くなく、35歳未満までトライアル雇用を利用できるようにすべき」と参院厚生労働委員会(3月18日)で提案していた。
 同事業の利用には、ハローワークへの求職の申し込みと、トライアル雇用対象者としての登録が必要。

「ニート」とは
 雇用もなく学校にも行かず職業訓練も受けていない、「若年無業者」と呼ばれる若者たちを指す。ニート(NEET)は、「Not in Education, Employment or Training」の略で、イギリスで生まれた新語。
 日本では、9月9日に発表された「労働経済白書」で初めて集計された。それによると、15?34歳で働かず教育も職業訓練も受けていない若者が、02年は48万人、03年は52万人と増加傾向にあることがわかった。イギリスでは、ニートの傾向として、「長期的キャリア形成の可能性は低く、税金納入者ではなくさまざまな社会福祉給付受給者になる可能性も低くない。また、薬物乱用者や刑法犯、ホームレスになる可能性も低くない」(「NEET問題について」労働政策研究・機構 小杉礼子副総括研究員)などの問題が指摘されている。
(公明新聞:2004年10月7日付)