* 党早期批准推進小委員会
* 事務局長遠山清彦参院議員

 戦争犯罪やジェノサイド(大量虐殺)などを犯した個人を裁く常設国際法廷「国際刑事裁判所(ICC)」の設立条約が7月1日に発効しました。これまでに138カ国が署名し、うち75カ国が批准を済ませていますが、日本はまだ署名も、批准もしていません。そこで、党外交・安保部会「国際刑事裁判所設立条約早期批准推進小委員会」の遠山清彦事務局長(参院議員)に、同裁判所設立の意義や課題などについて聞きました。

Qどんな裁判所か?
大量虐殺、戦争犯罪、人道に対する罪などを犯した
個人を裁く常設の国際法廷
 国際刑事裁判所(ICC)は、戦争犯罪(戦争に伴う残虐行為)や人道に対する罪などを犯した個人を裁く、常設の国際法廷です。
 戦犯法廷としては、第2次世界大戦後にニュルンベルク裁判や極東国際軍事裁判(東京裁判)が開かれ、史上初めて、戦争責任をめぐって個人が裁かれました。また冷戦終結後、旧ユーゴスラビア戦犯法廷とルワンダ戦犯法廷が開かれ、現在も裁判が進んでいますが、いずれも常設ではありません。
 ICCで対象となる犯罪は、(1)戦争犯罪(2)大量虐殺罪(3)人道に対する罪(4)侵略の罪――の4犯罪で、戦争に伴う残虐行為の禁止や民間人の保護などを定めたジュネーブ諸条約や他の国際法に基づき、罰金刑か有期刑が言い渡されます。国連安全保障理事会と締約国が告訴をすることができます。欠席裁判が認められず、特に「時効」がないことが大きな特徴です。
 法廷は2審制で、判決に不満があれば控訴することができます。裁判官は18人で、それぞれの法廷にはこの中から5人が専任され、検察官(1人)も含め、03年1月に開かれる締約国会議の選挙で選出され、同年半ばごろ本格稼動する見通しです。

Q設立の意義は?
残虐行為を予防 ひいては戦争の抑止力に
 戦争下においても、残虐で非人道的な行為を防止しようという試みは、1907年のハーグ陸戦条約(捕虜取り扱いなどを定めた戦時国際法)などに見られるように、約1世紀も前から始まっています。
 20世紀には、数百万人が非人道的な行為の犠牲となりました。その反省から生まれてきたものです。
 98年7月に、イタリア・ローマで行われた会議で、常設の国際刑事裁判所設置のための条約(ローマ規定)が採択されました。その条約前文には、「犯罪の実行者を不処罰のままにしておく状態を終わらせ、犯罪の予防に寄与する」とあります。
 ICCは、“指導者であれ、軍人であれ、非人道的行為を断じて許さない”という人類の強い意思を示すことで、戦争犯罪や虐殺を未然に防ぐ効果が期待されます。
 一方、冷戦後は、国対国よりも、民族間の対立を軸とする紛争が急増しています。こうした紛争では、民族間の対立感情をあおって戦争に駆り立てる過程で、大量虐殺などが行われるケースが多くあります。こうした現状では、残虐な行為を罰することが、戦争や内戦の発生・激化を抑止する力になると考えられます。

Q日本はなぜ未署名なのか?
戦争犯罪関連など国内法が未整備
 日本は、98年のローマ会議で非公式協議を呼びかけるなど、重要な調整役を果たしました。しかし、国内法が未整備のため、条約への署名も、批准もしていません。
 日本には、どういう行為が戦争犯罪にあたるのか、その基準を示す法律がなく、また現行法では、主権国家への犯人引き渡しはできますが、ICCのような国際機関に対しては引き渡しできないという法的不備があります。日本は、53年に武力紛争時の民間人保護や捕虜の扱いなどを定めたジュネーブ条約に加入しましたが、その後、国内法を整備してこなかったため、国内法として戦争犯罪を裁いたり、捕虜を人道的に扱う体制が整っていないのです。
 国内法の整備について政府は、国会で審議中の武力攻撃事態対処法制の中で、2年以内に整備することを示しています。

Q公明党の取り組みは?
早期加盟へ小委設置し推進
 公明党は、98年11月の結成大会における基本政策大綱で、「国際刑事裁判所の創設推進」を明記し、同裁判所創設への取り組みを本格的にスタートしました。
 今年2月の衆院本会議代表質問では、神崎代表が「国際刑事裁判所の創設なども含め、あらゆる課題に国連とともに全力で取り組むことこそが、『人道大国』として、わが国がめざすべき方向」と主張。また、衆参の各委員会でも、関係議員が国内法整備など批准へ向けた政府の取り組みを求めるなど、一貫して議論をリードしています。
 去る5月には、党外交・安保部会に「国際刑事裁判所設立条約早期批准推進小委員会」(荒木清寛座長=参院議員)を設置し、取り組みを強化しました。

Q今後の課題は?
求められる米など主要国の参加
 ICCの設立は、歴史上、画期的なことですが、今後の運用についてはさまざまな課題もあります。
 まず、仮に被告を起訴することができたとしても、警察などの独自の強制力がないため、被告の捜査逮捕などで実効性を確保できるかという点です。捜査・逮捕については、締約国に依頼するしかありませんが、締約国はその能力や政情に差があります。
 また、日本のほか米国(いったん署名したものの、02年5月に撤回)やロシア、中国、インド、イスラエルといった主要国が批准していないため、政治的バックアップや財政基盤の面で不安を抱えています。
 今後は、欧州や南米、アフリカなどの締約国を中心に実績を積み重ねるとともに、日本が早期に締約国入りし、米ロなどに参加を呼びかけていくことが重要です。
(公明新聞)